女の子視点
徐々に視界が晴れていく。
白いもやもやした目の前が急に形や色がつき始めたのを私は感じた。
そうやって完全に見えるようになってはじめてみたものは・・・・・・
「あら、あなたも転生者なのね。はじめまして、あなたの母親のエリナ・エヴァンスよ。」
なぜかholicの壱原侑子さんそっくりの人でした。
holicの世界に送られたのかと思ったけど、しかし、名前が違うから別人・・・・・・だと思う。
それから体が思うように動かないことから、やっぱり赤ん坊からやり直しだと気づいたのはそう遅くありませんでした。
「聞きたいことはたくさんあるだろうけど、一つずつ説明してあげるわ。」
侑子さん・・・・・・じゃなかったエリナさん?に説明されて、私は大体自分のおかれた状況を把握した。
この世界は私が想像したようなholicの世界なんかじゃなく、海鳴という地名や翠屋という喫茶店があることからリリカルなのはの世界の可能性が高いとのこと。
なぜ可能性なのかと言うと、この世界には高町家はあってもまだ高町なのはの姿が確認できていないことから推測されるらしい。もしかしたら、なのはの父である士郎さんが死亡するとらはの世界の可能性も捨てきれないからね。
エリナ・・・・・・ここでは母さんと呼んだほうがいいかもしれない・・・・・・母さんがなぜ生まれたばかりの私が転生者か解ったのは、感覚らしい。
私も最初は解らなかったけど、なるほど、なんとなく母さんも同類なんだと本能の部分でわかる。
「それに転生者が子供を作ると高確率でその子も転生者だっていうのは私たちの常識になっているもの。」
常識?常識になるほど転生者っているの?
「そうね~・・・・・・確認連絡がとれているのだけでも、50万人はいるのよ。ネットなんかでも専用のコミュニティサイトなんかもあるの。それでみんなと情報を共有して、危険回避なんかに利用しているわ。」
危険回避?転生者って原作に介入しようとしているイメージが強いけど・・・・・・
「あなたがそう思うのは無理ないわね。転生者と言っても千差万別。コミュニティサイトもさまざまな派閥が出来上がっているわ。私が属するコミュニティは二度目の人生を精一杯生きることを主目的にしているのよ。与えられた能力を使うかどうかは本人の自由意志に任せられているわ。その代わり、自分が負った責任は極力自分で背負うこと。助け合うこともあるけれど、基本は自己責任よ。」
厳しいのか、そうじゃないのか解りづらいわね。
「そうね。でも、私たちのコミュニティは原作介入派でも否定派でもないの。普通に人生を歩んでいるときに偶然関わっても、特にお咎めはないの。友達づきあいもライバル競争も自由にやっていいのよ。そりゃ、知識を使って社会を操作、支配しようとするのはさすがに止めるわ。ハーレムなんかも男の夢であるかもしれないけど、それはお話の中だから許されることであって、現実では通用しない。私たちはここで生きて、心をもっているのだから相手も心を持っている。それを忘れないでね。」
・・・・・・つかぬことを聞くけど、母さん。
「なあに?」
赤ん坊であるはずの自分と当然のように会話しているのはなぜ?あと、どうして自分を男前提で話すの?
「あら、仮にも私は劣化しているとはいえ壱原侑子の姿かたちと能力を与えられているのよ。読心術くらいはできるわ。後半は、今までの転生者は全て前世で男であるから・・・・・・今のあなたは女の子だけど・・・・・・もしかして前世も女の子?」
そのもしかしてだよ、母さん。
「あら、すごい!今まで男しか確認できていなかったのに、前世でも女の子なんて恐らくあなたしかいないわ!良かったわ、TS転生した子にこれからの女の子の生活を叩き込まなくちゃと覚悟していたもの。私も散々、お母さんを悩ませていたもの。」
へぇ、母さんって前世男だったんだ。もしかしておばあちゃんも?
「そうね、記録だけでも家は200年も転生者を出している家よ。普通の子も生まれているけど、一代の間に必ず一人は転生者が生まれているの。それで先の転生者が後の子に生活のことや現実のことを教えているの。中には俺tueeee!や自分主役!なんて勘違いしている子もいるもの。私たちはあの管理人の暇潰しで転生している、だからせめてもの抵抗で現実を真っ当に生きることを心情にしているのよ。」
あ、それは納得。
英国紳士に見えるけど、やっていることって外道だよね。
「わかってくれて嬉しいわ。」
そうやって母さんは綺麗に笑った。
女の私でも綺麗と思える笑顔だ。
少なくとも女に転生して、子供を作ったことに関してなんの負い目も感じない。
私もそんな風に笑えるようになるのだろうか。
あれから3年経ちました。
え?唐突過ぎ?赤ん坊時代をだらだらやっても喜ぶ人はそんなにいないので省きます。
ちなみに私の名前はソウル・エヴァンスとなりました。
母さんに能力のことを話したら、苗字もエヴァンスだから丁度いいとばかりに付けられたのです。
別に男でも女でも違和感のない名前だからいいですけど。
それから母さんのコミュニティの人ともそれなりの挨拶して、体を動かせるように鍛えたり、勉強したりしてそれなりに充実しています。
ですが最近、私はあることが気になります。
「母さん、父さんっているの?」
そう父さんの存在です。
動けるようになって家の中をうろうろするようになって、この家がまんま壱原侑子の『店』と同じ外観作りになっているのはわかった。(家に関しては母さんの趣味と判明)
それで家の中はそれなりに広いのだが、なぜか私と母さんしかいない。
単純に会わないというのではなく、本当に私と母さんしかこの家にいないのだ。
写真かなにかあればいいのだが、アルバムらしきものは本棚でも手の届かない場所にあり、なにかに上っても届かなくて手が出せない状況だ。
仏壇とかはないから故人というわけでもなさそうだ。
なので、堂々と母さんに聞く。
「あら、いるわよ。そういえば話していなかったわね。」
そう言いながら母さんは私の手に届かなかったアルバムをとって開いてくれた。
そこにはTOFのラスボスさんが母さんと仲良さげに並んでいました。
「なぜにダオス!?」
しかも現代のカジュアルな服装が妙にマッチしていてなんか似合ってる。
「この人も転生者で、ファンタジアのダオスの容姿と能力を持っているの。だけど、すごく優しくていい人でね。お母さんに一目ぼれしたって言って、すごく情熱的に口説かれちゃったわ。」
そうやって頬を染めてはにかむ母を見て、だれがこの人を元男だと思う人がいるのだろうか。
そう思ってしまっても仕方ないほど、可愛らしいひとだ。
「だけどこの人・・・・・・キリヤさんって言うのだけど・・・・・・ちょっとドジなところがあってね。私と会っているときに限って電柱に顔をぶつけたり、なにもないところで転んだり、服のボタンを掛け違えたり、お買い物頼んでピーマンとパプリカ間違えたりしたのよ。」
それってちょっとなの?
「しかもそれがお母さんと一緒にいると緊張して、変に力が入っちゃうのが原因だと解ったときは、なんだかほっとけないって思っちゃってね。それであの人のプロポーズを受けたのよ。」
俺tueee!や俺主役!みたいな事はなかったの?
「いいえ、むしろ私が言うまでここがリリなのの世界であることや、私が壱原侑子の容姿であることに全然気づかなかったくらいですもの。」
「それってどんだけ?もしかして、自分の能力も把握してなかったの?」
「その辺は大丈夫よ。この力は危険だから、制御訓練だけは怠っていないって言ってたもの。一度見せてもらったけど、ダオスレーザーも完全に使いこなしていたわね。」
「へ~、でもなんでその父さんが今は近くにいないの?」
私がそう聞くと母さんは少し顔を曇らせた。
あ、なんか不味いこと聞いてしまったのかな?
「お父さんは・・・・・・キリヤさんはね、今はとても遠い星でお星様になって私たちを見守っているのよ・・・・・・」
そう言って母さんは袖で顔を覆ってしまった。
そこで私ははっきり解った。
父さんは・・・・・・
「デリス・カーラーンで住民を導いているのね!」
ガタン!!ダダダダン!!!
私がそう結論すると、母さんはドリフのコントのように崩れ落ちた。
「な、なんでそんな結論になるの?」
「あれ、違うの?」
私が首を傾げていると母さんはなんだか頭を抱えている。
ダオスといったらダオスレーザーとデリス・カーラーンだと思うんだけどな。
「僕は普通の商社のサラリーマンなんだけどな・・・・・・」
そこにタイミング良く後ろから声が聞こえた。
私が後ろを向くと、スーツ姿に旅行カバンを引っさげたダオス・・・・・・恐らく私の父キリヤ・エヴァンスがいた。
苦笑しながらも、そのオーラは覇王や魔王のオーラ・・・・・・なんか微塵も感じないごく普通のサラリーマンにしか見えない。
「おかえりなさい、キリヤさん。出張お疲れ様!」
「ただいま、エリナ。はじめまして君の父親のキリヤだよ、よろしく。」
母さんが上機嫌で父さんに挨拶して、父さんもそれに応える。
うん、普通に仲睦まじい夫婦だ。
お星様になった云々は母さんの冗談なのだろう。
私はそう結論付けて、父さんにトコトコ近づく。
「初めましてソウル・エヴァンスです。よろしくお願いします、父さん!」
今の私は普通に笑えたのだろうか。
父さんはそう言った私を上機嫌で抱き上げてくれたから、第一印象はそれほど悪くないはずだ。
これから家族をやっていくのだから、険悪なのは避けたい。
いつか本当の家族になれるようにがんばるから、今はこれで勘弁してください。
父さん、母さん。
「ちなみにお兄ちゃんもいるから、そのうち紹介するわね。」
「え!?」
マジですか?
キャラクタープロファイル
ソウル・エヴァンス
現在3歳
見た目女体化したソウル・イーターの幼女版。(コミック17巻参考)
能力は大鎌になる能力と魂感知と退魔・・・・・・なんだがソウル自身はそんなに使う用途を感じていない。
今回、結構動揺しているが本来はかなりのマイペースののんびりや。
こんなので自分の職人を見つけられるのかな?
エリナ・エヴァンス
ソウルの実母、二児の母。
前世は男だが、それを感じさせないほど女であることに順応している。
幸せな家庭を築いているのが何よりの証拠。
能力はholicの対価を貰って相手の望みを叶える能力。本人曰く、原作より若干劣化しているとのこと。
転生者の中では勝ち組。
キリヤ・エヴァンス
ソウルの実父、二児の父。
前世ではあまりマンガやアニメは見なかったようで、見覚えのあるキャラを見ても、そういえばいたな程度にしか思っていない。
能力はダオスの戦闘能力など。本人曰く危険な力なので制御訓練だけは怠っていないとのこと。
普通の会社のサラリーマンをしている。それでも部長なので結構えらい?