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ずっと待っていた。

君のために、君だけのために・・・

僕はこの世界に生れ落ちる。

僕は君の名前を知っている。

だけど、僕は君の口から聞きたい。

だから聞かせて、君の名前を・・・
 


デジモンウィザード
『僕が君のパートナー!』








(ルイズ視点)

今日はトリステイン魔法学園の2年生に進級するための大事な儀式がある。

私は目の前で、次々と自分の使い魔を召喚するクラスメイトを見ながら、自分の杖を握り締める。

もうすぐ・・・もうすぐ私の番。

「次が最後か・・・ルイズ!」

自分の名前が呼ばれて、私は前に出る。

そして杖を構えて目を閉じ、意識を集中させる。

落ち着け・・・落ち着け!

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」

お願い来て・・・!

「五つの力を司るペンタゴン」

この世界・・・ううん、どこでもいい。

「我の運命に従いし・・・」

私の・・・私だけの・・・

「使い魔を召喚せよ!」

 

 

 

運命の使い魔よ!!!

 

 

 

私が詠唱を終えて一拍置いて・・・


どかーん!!!!


ものすごい爆発が起こった。

「けほけほ・・・成功したの!?」

私は巻き上がる煙に咳き込みながらも、爆発の中心を見る。

煙でよく見えない。

徐々に晴れていく煙。

胸が高鳴る。

一体どんなのが私の使い魔なのかしら?

そして私の視界の入ったのは・・・

「たまご?」

そこにあったのはカラフルな模様の見たことのない卵がそこにあった。

なに・・・これ?

これがわたしの使い魔?

そりゃ、使い魔の中にはまだ幼生の生き物もいたけど、たまごなんて聞いたことないわよ!!?

私は呆然としながらも、その卵を両手で拾い上げる。

両手の中にずしりとくる重さ。

まるでこれから生まれてくる命の重さのような気がして、私の胸が少し温かくなった。

これじゃコントラクト・サーヴァントできない。

でも・・・この卵が私の使い魔なんだ。

「ほー・・・見たことのない卵ですな。」

そこにミスタ・コルベールが卵を覗き込んだ。

「一体、どんな生き物が生まれるのか楽しみですな。」

ミスタ・コルベールは興味津々といった感じで卵を見る。

私はなんとなく、その卵を手のひらでゆっくりと撫でた。

気のせいかな。心なしか暖かい。

私がそうしていると、いきなり卵にひびが入った。

へ?ひび?

「え?え?ええええぇぇぇぇ!!!!?」

私が驚いている間もひびはどんどん広がっていく。

そして・・・

「初めましてルイズ!」

白くて、なんか柔らかくて、四足のが生まれてきた。

これが・・・私の使い魔?

「なんなのあんたー!!?」

 

 

 

 

 

 

その日の夜。

私はあの後、コントラクト・サーヴァントをなんとか終わらせて部屋に戻った。

なんだか精神的にすっごく疲れたわ。

使い魔のルーンを刻むとき、痛みで泣き出したときなんて泣き止ますのに苦労したわ・・・

「ルイズー・・・お腹すいたー・・・」

私の使い魔・・・トコモンって名前らしい・・・がそう言った。

そういえば、昼間の儀式からなにも食べさせてないわ。

と言っても、トコモンってなにを食べるのかしら?

私は試しに夜食として出されたパンを半分にちぎって出してみる。

トコモンはパンを一口食べて、あとは嬉々として食いついてきた。

・・・人間の食べ物でも大丈夫みたいね。

「そういえば・・・トコモン、あんたなんで私の名前知ってたの?」

私は聞きたかったことを聞いてみた。

トコモンは口の中のパンを飲み込むと、私のほうをまっすぐ見た。

「僕はずっとルイズを待っていたんだ。僕はルイズのために生まれてきたんだ。」

トコモンははっきりそう言った。

その瞳は真っ直ぐで無垢で、嘘なんかついている瞳じゃなかった。

私のためって・・・そう言われて悪い気はしないわね。

「そっか・・・」

私はそれだけ言うと、制服を脱いで寝巻きに着替えてベッドに潜り込む。

パンを食べ終わったトコモンが私の枕元に来て丸くなる。

本当なら使い魔と主人が一緒に寝るわけにはいかないけど、まだ生まれたばかりの子を床に寝させるわけにはいかないわよね。

まだこの子がなにが出来るかわからない。

人間の言葉を喋れる時点で、知能が高いことはわかるけど。

生まれたばかりの赤ちゃんみたいなこの子となら、私上手くやっていけるかな?

私はトコモンの温もりを感じながら、眠りについた。

その日の眠りはすごく穏やかなものだった。

 

 

 

 

 


「・・・・・・イズ・・・・ル・・ズ・・・」

だれ?私を呼んでいるのは?

私は重いまぶたをゆっくり持ち上げた。

途端に広がるまぶしい光。

そして・・・

「おはようルイズ!」

視界にいっぱいに大きな口と歯が覗き込んでいた。

 

 

 


「きゃああああああああああ!!!!?」

 

 

 

私は貴族らしからぬ叫び声を上げて飛び起きた。

「うわ!?」

私の顔を覗き込んでいたトコモンがその拍子にベッドから落ちた。

「ト・・・トコモン、脅かさないでよ・・・」

一瞬食べられるかと思ったじゃない。

トコモンはすぐに起き上がって、私の顔を見てにっこり笑った。

「おはようルイズ!朝だよ、ごはん食べよう!」

「おはようトコモン。解ったわ、支度するからそこのクローゼットから着替え出してちょーだい。」

「はーい!」

トコモンは素直に返事すると、クローゼットに向かって歩き出した。

トコモンが準備してくれている間に、私は水差しから水を汲むと顔を洗って目を覚ました。

今日の朝食はなにかしら?

私はそんなことを考えながら、トコモンの方に目を向けてみる。

「・・・なにしてるの?」

「ルイズー・・・重くて動かせないよー・・・」

トコモンはクローゼットの引き出しに捕まって、必死になって開けようとしている。

・・・・・・ま、まぁ、小さいトコモンに任せたのが間違いね。

私は苦笑しながら自分でクローゼットから着替えを取り出す。

この子に雑用を任せるのは、やめとこう。

なんだかものすごく罪悪感に苛まれそうだし。

 

 

 

 

 

それから色々あった。

私と天敵のキュルケの使い魔の見せ合いや、授業中の実演魔法の爆発とか・・・

ふ・・・ふん!火竜山脈のサラマンダーがなによ!

トコモンのほうがすっごいんだから!・・・多分。

そしてもうすぐ昼食の時間。

私はいつの間にかいなくなったトコモンを探して、今学園中を歩き回っている。

「おかしいわね・・・トコモンー!」

一体どこに行っちゃったのよ。

私がヴェストリの広場に入ったところで、人垣が出来ているのに気づいた。

「あれ?ねぇ、一体どうしたのよ?」

私が手近な生徒に聞いてみると、トコモンとギーシュが決闘しているのだという。

なんでそうなったのか聞いてみると、トコモンがたまたま拾った香水のビンをギーシュに返したところ、それで二股かけていることが発覚。

恥を欠かされたギーシュがトコモンに決闘を挑んで、トコモンがそれを受けたみたいだけど・・・待って!トコモンはまだ生まれたばかりの赤ちゃんみたいなものなのよ!?

いくら言葉が話せて知能が高いからって、決闘だなんて・・・

私は慌てて人垣を分け入って、中央に行く。

決闘はとっくに始まってるみたいで、ギーシュの側には錬金で作られた人形が、その少し離れたところにぼろぼろになったトコモンが転がっていた。

「トコモン!!」

「来ないで!」

私はトコモンに駆け寄ろうとしたが、トコモンが鋭く言うから私は思わず足を止めてしまった。

トコモンはぼろぼろな癖に立ち上がってギーシュを睨みつける。

「ほぉ、まだ立ち上がるなんて。そのタフさには敬意を評するよ。ゼロのルイズの使い魔のわりにね。」

ギーシュはそう言いながらも、その目はトコモンをせせら笑っていた。

「もういいでしょう!トコモンのやったことは主人である私が謝るわ!だからもうやめて!!トコモンも決闘なんてする必要ないわよ!!」

私が必死にギーシュに訴える。

けど、私の言葉に反してトコモンはギーシュを睨むのをやめない。

「僕はやめないよ、ルイズ!」

「なんで?どうしてよ!?主人である私の言葉が聞けないっていうの!?」

使い魔のくせに私の命令に従わないなんて・・・

「だって・・・あいつ、ルイズを馬鹿にしたんだ!そんなの僕許せない!!この決闘も僕が勝てばルイズに謝ってくれる約束なんだ!!」

・・・私の・・・ため・・・?

「僕は・・・僕は・・・
     ルイズのパートナーなんだ!!」

「トコモン!!」

 

 

 

 

私の中でなにかが弾けたように感じた。

その瞬間、トコモンの体が眩しい光に包まれた。

なに!?一体なにが起こっているの!?

 

 

「トコモン進化 パタモン!!」

 


トコモンの姿が一回り大きくなって、オレンジと白のツーカラーになった。

耳のような部分でぱたぱたと飛んでる。

「トコモン・・・なの?」

私は呆然と呟いた。

「な!?変身した!?けど、そんなの見掛け倒しだろ!?」

ギーシュは杖を造花の杖を振るって、人形・・・ワルキューレをトコモン(?)に仕掛ける。

そんなトコモンはもう動けないはずなのに!

「トコモン逃げて!」

トコモンはまっすぐワルキューレを見る。

「エアーショット!」

トコモンが空気の玉を吐き出して、それをワルキューレにぶつけるけど、ワルキューレはそれを苦とも思わず真っ直ぐつっこんで来て、トコモンを地面にたたきつけた。

「トコモン!」

トコモンは殴られた頭を抑えながら、とうとう涙目になっている。

あ・・・やばい・・・

「トコモン・・・」

「うわーーん!!!!!」

私が声を掛けると同時にトコモンが泣き出した。

ただ泣いたわけじゃない。

空気が震えているのが見えるぐらいの、超音波を発しながら・・・

がっしゃーん!

がらがらがら!

窓ガラスが割れて、ワルキューレが超音波に耐えられず崩壊している。

まわりの生徒たちはあまりの音に、気絶する者続出!

ギーシュも耐え切れず既に気絶している。

そういう私も気力だけで、意識を繋ぎとめているけど・・・

私は耳を押さえながらなんとかトコモンのところに歩いていく。

そして私はトコモンを抱きしめた。

「トコモン。もう泣かなくていいわよ。ギーシュは気絶しちゃって決闘を続けられないわ!あんたの勝ちよ!!」

「ふぇ・・・ルイズ?」

よかった・・・泣き止んでくれたみたいね。

「よくやったわね、トコモン。」

私はトコモンの背中を撫でながら、周りを見る。

なんていうか死屍累々ね・・・

「ルイズ。今の僕の名前はパタモンです。」

トコモン・・・パタモンはまだ少し涙目になりながらも、にっこり笑ってそう言った。

「そう。これからもよろしくパタモン!」

私もパタモンににっこり笑い返した。

 

 

 

続かない!
 

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