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「あーあ、つまんないなー・・・」

エドワードはその日、いつも一緒にいるアルフォンスとはおらず、一人リゼンブール村のはずれの湖畔で座り込んでいた。

アルフォンスは重い病気に掛かり、村の医者では治せないと判断され、アルフォンスは母トリシャと共にイーストシティの病院にいっている。

その際、エドワードは留守番ということになり、現在はピナコ・ロックベルの家でお世話になっている。

エドワードは友人たちと遊ぶわけでなく、一人で湖の湖畔に訪れていた。

「アルの奴・・・いつになったら帰ってくるんだよ。」

エドワードは暇つぶしに木の枝で錬成陣をその場で描くと、粘土で出来た馬の人形を錬成する。

「へー!おもしろい術ね。」

その時、エドワードの背後から若い女性の声が聞こえてきた。

エドワードは慌てて振り向くとそこにいたのは、この辺りでは見たことのない服に身を包んだ20歳前後の長い髪の女性だ。

赤い髪と強い意志を感じる瞳、両手首とベルト、首のところにある紅い宝石も印象的だ。

間違いなく美女の部類にはいる。

エドワードは思わずその女性に見惚れていたが、女性のほうはそれに意を介さずエドワードに先ほどの錬成のことを聞いていた。

「おもしろい魔法ね。ね!ね!それあたしに教えてくれない!?」

「え?これ・・・錬金術だけど・・・」

エドワードは女性の魔法という言葉に戸惑いながら、答えた。

「錬金術?・・・こんな陣を使った錬金術初めて見るわね。それでいいからあたしに教えてちょーだい!」

「え、いいけど教えたらなにを代価にくれるんだ。」

エドワードは気丈に女性を見ながら、そう言った。

女性はすこし考え込むと、手をぽんとひとつ叩くと明るく提案した。

「それなら、あたしは魔法を教えるわ。黒魔法、白魔法、精霊魔法とかあるから時間かかるけど。」

「ほんと!?」

エドワードはやはり子供らしく、魔法と聞いて目を輝かせた。

「あ!お姉さん名前は?」

エドワードはここでやっと女性の名前を聞いた。

「あたし?あたしの名前はリナ・インバース。魔術師リナ・インバースよ!」

女性は高らかにそう名乗った。

それからエドワードはリナをマスターと呼び(呼ばせられ?)、アルフォンスがイースト・シティから帰ってきてもこっそり魔法の修行をつけてもらった。

このとき、エドワード5歳である。
 


錬金術師は魔法使い!?
『はじまりの嵐』







その日、外は嵐だった。

エドワードとアルフォンスは家に閉じこもり、2人で大きな錬成陣を描き、なにかの材料を調合していた。

エドワードとアルフォンスの母トリシャが亡くなった。

そのことで2人の心にぽっかり穴が開いてしまった。

2人は錬金術で母を取り戻そうとしている。

エドワードは母の体の材料となる物質を揃えながら考えていた。

それはリナから学んだ魔法のこと。

5歳のときからリナから魔法をみっちり!仕込まれたエドワードでも母の病気を延命できても完全に治せなかった。

母が死んだとき、エドワードは魔法でトリシャで蘇生させようとした。

けれど、それはすぐさま無理だとエドワードは悟ってしまった。

リナから魔法を教わったエドワードは、魔法の理を少しならば理解していた。

それに自分の今の魔法技術でもゴーレムを母に真似て作ろうとしても、無理だということも。

むしろリナに人間を蘇生させようとしたことがバレたらただではすまないだろうが、エドワードはそのことを頭から消去していた。

だからエドワードは錬金術にすがった。

母に会いたいから。

「いくぞ・・・」

「・・・うん」

材料も錬成陣も揃い、エドワードとアルフォンスは錬成を始める。

錬成が始まると同時に起こる雷に似た錬成反応。

凄まじいエネルギーの渦に、2人は錬成の成功の光を見た。

しかし、それも長くは続かなかった。

エネルギーの渦の光が変り、禍々しいものとなる。

「兄さん・・・なにか・・・変だよ。」

アルフォンスはその錬成反応に不安を覚え、エドワードに聞くが、自分の手が黒い無数の手によって分解されていくのに気づいた。

手だけではない、足も体全体が分解されていく。

「うわあああああああ!!!」

「アル!!」

エドワードはアルフォンスの元に駆けつけようとしたが、不意に足が動かない。

見れば自分の左足も分解されていくのが見えた。

それでもエドワードは必死にアルフォンスに手を伸ばしていく。

「兄さん、兄さん、兄さん!」

「アルぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」

そこで一度、エドワードの意識は途切れた。

 

 

 

 

 


エドワードは大きな門に引きずり込まれ、真理を頭に叩き込まれた。

そして、次に目覚めてみれば左足はなくなっていた。

鋭利な刃物で切ったかのように見える傷口は延々と鮮血を流す。

「アル・・・アルフォンス!ちくしょう・・・持っていかれた・・・!!!」

エドワードは自分の体も省みず、弟の姿を探すがそこにはアルフォンスが着ていた衣服しかなかった。

「か・・・母さんは・・・」

エドワードは錬成されて戻ってきたと思う母の姿を見ようと錬成陣の中央に目を向けるが、そこにいたのは母では・・・いや人ですらなかった。

「うわあああああああああああああ!!!!!!!」

エドワードは目の前の悪夢のような光景にただ絶叫した。
 

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