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人ではないが人の形をした器。

エドワードはその器の内側に自らの血で血印を描く。

次に自分の額、両腕、胸の部分に同じの血印を描く。

そして願う。

「返せ・・・返せよ・・・たった一人の弟なんだー!!」

少年は再び門を開いた。
 


錬金術師は魔法使い!?
『決意』








アルフォンスの魂を鎧に定着させ、そのアルフォンスに連れられて現在ピナコ・ロックベルで療養をしている。

エドワードは熱に魘されながらも、先ほどここに来た国家錬金術師の言葉を考えていた。

豊富な資金と研究資料の閲覧とあらゆる特権。

その代わり軍に服従しなければいけない。必要ならば戦争にも駆り出される。

(アルの体を元に戻すには・・・)

エドワードはそこまで考えて、自分の魔力を練りだす。

そして片方の腕を無くなった方の腕の付け根に手を翳す。

「白き流れ 癒しの力よ ・・・リカバリイ(治療)」

白い光がエドワードの傷口を覆う。

その光はエドワードの傷を完全に癒すわけでなかったが、いくら包帯を替えても止血しきれなかった血の滲みがそれ以上広がることはなかった。

(とりあえず止血ぐらいは・・・これ以上は体力がもたねー・・・)

エドワードは傷口がふさがると同時に、体力を消耗していくのを感じた。

「先生とマスターにバレたら・・・俺、殺されるよな・・・」

(リザレクションが使えたら、もう少しなんとかなるのに・・・もっとちゃんと回復魔法を学んどくんだったな・・・そうすればアルも・・・母さんも)

エドワードは一通りの魔法は使えるのだが、その性格のためか治療系の魔法を苦手としているのだ。

(攻撃魔法が・・・特に黒魔法が得意なんて、シャレにならねーよな・・・)

エドワードはそう考えていると、ピナコとウィンリィが部屋に入ってきた。

そして、包帯を新しく替えてもらい、エドワードは決意していたことを話す。

「ばっちゃん・・・家にまとまった金があるんだ。」

「馬鹿、つまんないこと気にするんじゃないよ。」

ピナコはエドワードの子供らしからぬ言葉に、反論するが次に出てきた言葉は予想していたものではなかった。

「違うんだ。その金で・・・俺に機械鎧をつけてくれ。」

機械鎧・・・慣れれば自分の手足と同じように使えるものだが、装着時の痛みは大の大人も悲鳴をあげ、リハビリには3年も掛かるといわれている。

「軍の狗と呼ばれようとも構わない。俺にはやらなくちゃならないことがあるんだ!」

(アルを元の体に・・・!!)

その瞳には、強い焔が灯っていた。

 

 

 

 

 

 

あれから1年の月日が流れた。

エドワードは1年で機械鎧のリハビリを終わらせた。

そして、昼間アルフォンスと互角に組み手をできるまでになった。

今は夜。

エドワードはみなが寝静まった頃を見計らって、昼間アルフォンスと組み手をした湖にきた。

「火より生まれし輝く光よ 我が手に集いて力となれ ライティング(明り)」

エドワードの手より光球が生まれ、それを空中に浮かせた。

その明かりはさほど強いものではないが、辺りを見渡すには十分の光量だ。

「よし・・・」

「随分魔法の扱いも上手くなったわね。」

「!?」

エドワードが魔法の鍛錬をしようとした時、背後から聞き覚えのある女性の声が聞こえてきた。

それは5年近く自分に魔法を教えてくれた人の声。

エドワードは恐る恐る後ろを振り返ると、そこにいたのはまさに想像通りの人物がいた。

「久しぶりね、エド。」

「マ・・・マスター!?」

そこにいたのは、出会った頃とまったく変らないリナがいた。

エドワードはそこでリナに人を蘇生させようとしたことがバレたときのことを考え、一気に血の気が引いた。

「お、お、お、お、お久しぶりです!マスターはクレア・バイブルを探していたんじゃ・・・」

エドワードはしどろもどろに聞くと、リナはにっこり笑った。

否、表面上は笑っているが額に青筋が見えることから、確実になにか怒っている。

「クレア・バイブルはまだ見つかっていないわ。この世界ってあたしからしたらクレア・バイブル級の書物が多くて・・・それよりエ・ド♪」

びっぐぅぅぅ!!

リナのその声にエドワードはあからさまに怯えた。

「なーんで右腕と左足が機械鎧になってるのかな?」

一歩リナがエドワードに近づく、それにつられてエドワードは一歩後ずさる。

「ちょっと調べさせてもらったわよ。あんた・・・あたしの言いつけを破って禁忌を犯したって?」

リナが一歩近づき、エドワードが一歩後ずさる。

「あたし言ったわよね?この世の理に反することだけはするなって・・・」

そこでリナの足が止まる。

しかし、その手には紅い光球が輝いている。

「この馬鹿弟子がーーー!!!!」

ファイアー・ボール(火炎球)

その夜、エドワードの絶叫が響き渡ったが、それを聞くものはいない。

 

 

 

 

 

 

「まったく・・・それでこれからどうする気よ。」

「国家錬金術師になろうと思ってる。」

エドワードはリナをまっすぐ見ながらそう言った。

しかし、半分近く黒こげだから格好はついていないが・・・

リナはそんなエドに呆れたようにため息を吐いた。

「あんたのことだから、国家錬金術師になって元の体に戻る方法を見つけるつもりなんでしょ?」

「だって!・・・だって、アルがあんな体になったのは俺のせいだから・・・」

そう言って俯くエドワードにもう一度リナはため息を吐くと、懐から4つの紅い石のタリスマンを取り出した。

デザインは若干リナのものと違うが、それでもリナのタリスマンと同じ力が秘められているのは、エドワードでも容易にわかった。

「あたしからの餞別よ。デモン・ブラッドのタリスマン。以前教えたブーストを使えば、魔法の威力が上がるわ。」

そう言ってリナはエドワードの手にタリスマンを乗せる。

ライティングの光に照らされて、タリスマンの石がその名のとおり血の様に紅い輝きを放っていた。

「マスター・・・」

「それにしても!変な世界よね。人間以外の奴はこの世界に来れないのに、魔法は元の世界と同じように力を借りることができるなんてね!!」

エドワードがリナの心遣いに涙が零れそうになったが、リナは照れ隠しのように明るくそう言ってそっぽ向いた。

「あたしはそろそろ行くわ。いいこと!あんたがそう決めたんだから、絶対立ち止まるんじゃないわよ!!」

リナはそう言い終ると、そのままレイ・ウイング(翔封界)で飛び立った。

エドワードは飛び立つリナの背中を見送りながら、タリスマンを身に着けると、リナに向けて深く頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ
最後の余韻を台無しにされたくない方は、一気にスクロールしてください!

 

 

 


が!そこで感動的に終わるわけなかった。

エドワードが顔を上がると、いくもの炎の矢・・・恐らくフレア・アロー・・・が何発もエドワード向けて飛んできた。

「んぎゃあああああ!!!」

ちゅどーん!!

合掌・・・ちーん
 

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