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「へ?あんたがあたしに協力してほしい?」

リナは目の前に現れた久方ぶりの戦友とも呼べる奴の言葉を鸚鵡返しに言った。

「はい。異世界に落ちてしまったクレア・バイブルの写本を探してほしいのです。」

昔の戦友・・・高位魔族ドラゴン・スレイヤーとも呼ばれた獣神官ゼロス。

彼は昔から変らない容姿でそう言った。
 


錬金術師は魔法使い!?
『裏話』







クレア・バイブル・・・異世界の神や魔王の魔術や奥義を書き記した伝説の魔道書。

本物のクレア・バイブルは『本』と呼べる形状ではないが、この際関係ない。

世の中にはそのクレア・バイブルを書き写した写本が多数存在する。

リナは胡散臭そうな顔で、目の前の魔族を見る。

「なんであたしに依頼しに来るのよ・・・」

「それが・・・その世界では人間しか関与できないような変なプロテクトが掛かってて・・・」

困ったように笑いながら頭をかくゼロスに、リナは深いため息を吐いた。

この魔族ははぐらかすのがとにかく上手い。

リナはそれを解っていながらも、ゼロスの話を詳しく聞いてみた。

曰く、人間達の手にクレア・バイブルが渡らないように処分しに、世界中を回っていたが、その中の一つを誤って次元の彼方へ落としてしまった。

すぐにそれを回収しようとしたが、魔族や神族はその世界に入ることができないことがわかった。

そこで腕の立つ人間・・・つまりリナにその白羽の矢がたったのだ。

「ふーん・・・あんたたちがそこまでして回収しようとするとなんて、よっぽど重要なことが書かれた代物なのね。」

リナは目をぎらりと輝かせる。

ゼロスはそれにやや引きつつ、内心はやまったのかと後悔しかけた。

「え・・・えぇ、それでどうしても回収、もしくは処分しなければならないのです。それで報酬のほうは・・・」

リナはゼロスから報酬の話を聞いている途中、ゼロスの身に着けているものにリナは注目した。

現在リナが身に着けているデモン・ブラッドのタリスマンと同じものが4つ。

リナはそれに目を輝かせた。

「・・・こんな感じでー・・・ど、どうしました?」

ゼロスは獲物を狙う目で見てくるリナに思わず引いてしまう。

「報酬、あんたがつけてるタリスマン頂戴!!」

ズドッ

ゼロスはそれに思わずずっこけた。

「だ・・・ダメですよ!これはやっと新しく貰えた・・・」

「それがいい!じゃなきゃ依頼受けないわよ?」

リナは脅しともとれる言葉にゼロスはぐっと押し黙りそうになる。

「リナさんは既にデモン・ブラッドのタリスマン持ってるじゃないですか。」

「これはあんたから買ったの!いいじゃない、わざわざ異世界に行ってあげるって言ってるんだから。」

この時点でゼロスに選択の余地が無かったことを明記しておこう。

 

 

 

 

 


「ほーほほ!素直に渡せばよかったのよ!」

「うー・・・絶対依頼遂行してくださいよ?」

ゼロスは半ば涙を流しながら、異世界の門を開く。

「ま!なるようになるでしょ!!それじゃガウリィたちに事情を話しといてよ!!」

リナはゼロスから強だ・・・ゲフンッ前報酬として受け取ったタリスマンを懐にしまい、意気揚々と門の中に消えていった。

「お願いしますよー・・・はぁ」

ゼロスはリナが見えなくなったところで、深いため息を吐いた。

「まったく・・・よりにもよって『闇の賢者の石』の生成法を記したクレア・バイブルが異世界に渡るなんて・・・」

ゼロスはそう呟きながら、天を仰いだ。

「あれが下手に知識のある人間に渡ったら、国一つ簡単に滅んでしまいますしね。」

 

 

 

 

 

 

「ここが異世界かー・・・」

リナは異世界についた第一の感想である。

まわりは草原で、少し離れた場所には湖が見える。

まわりには人家らしきものがちらほら見える。

簡単に言えばド田舎だ。

「別段あたしらのところとあんまり変らないみたいね。」

リナはそう呟いて、ひとまず湖のほうへ足を向ける。

しばらく歩いてみると、湖の湖畔に5歳くらいの金髪の男の子がなにか地面に落書きしている。

リナは地元の子かと思い、話しかけようとするとその落書きのようなものから雷のようなものがほとばしった。

そして、その子供の手に粘土の人形があった。

「へー!おもしろい術ね。」

リナは子供の使った術に興味を覚えてた。

あのような陣を用いた魔術も存在するが、その陣の構成はリナの見たことの無いものだった。

「おもしろい魔法ね。ね!ね!それあたしに教えてくれない!?」

リナはその知的探究心で子供から、その術を学ぼうとするが、子供はその術を錬金術といい気丈にもリナを真っ直ぐに見る。

「え、いいけど教えたらなにを代価にくれるんだ。」

(うっ案外ちゃっかりしてるわね。)

リナは思わず顔が引きつりそうになったが、少し考える。

この子供は代価といった。

なにか自分の持ってる道具を渡したところで、恐らくこの子にはあまり意味がない。

アメでも渡そうものなら、利発そうなこの子のことだ。

怒り狂うかもしれない。

そこでリナは思いついた。

「それなら、あたしは魔法を教えるわ。黒魔法、白魔法、精霊魔法、神聖魔法、音声魔法とかあるから時間かかるけど。」

「ほんと!?」

リナの提案に子供は案の定食いついてきた。

(ふっふっふっ、姉ちゃんよりみっちりしごいてやるわ!)

リナは内心それで子供が早々に諦めてくれることを願っていると、子供が名前を聞いてきたのでリナは高らかに名乗った。

「あたし?あたしの名前はリナ・インバース。魔術師リナ・インバースよ!」

 

 

 

 

その後、エドワードと名乗った子供はその後5年近くリナのしごきに耐え切り、リナの思惑を大きく裏切った。
 

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