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俺は転生した。
なんのことだが解らないかもしれないが、本当のことだ。
俺は目覚めると水晶のような壁とその壁の中に並んで目をつぶった男がたくさんいるところにいた。
その下には出産予定数と書かれた数字が表記されている。
最初は人間が標本にされているのかと思っていたけど、それは違った。
なぜならその中にいる男たちの特徴と場所の特徴に俺は心当たりがあったからだ。
気づいたのは本当に偶然。
俺自身も本当になんで気づいたのか解らないぐらいだ。
そこはゲームの中の世界。
それでもそこの住人だろうとおいそれと来ることができない場所なのだ。
俺はそこで生まれた。
ウサギ耳を生やした男の子モンスターとして……
「そりゃあさ、俺だって幸福きゃんきゃんよりはマシだって思うよ。だからって男の子モンスター最弱になんてなりたかねーよ。」
俺は紅茶とお茶請けの準備をしながら天使に向かって愚痴を言う。
愚痴を言いながらでも手を止めない俺は結構慣れたもんだと自分でも思うぐらい自然な動作だ。
「しかたありませんよ。サーヴァントゲームにあたって、転生先を弄るのは禁止されていますからそこは完全に運しだいなんですから。」
俺の手のひらサイズの天使はそう言いながら苦笑した。
俺はそれにため息が出そうになった。
普通の男の子モンスターはここにはいられないが、俺は今代のエンブリオの一番最初の子として特別にここに住まわせてもらっている身だ。
それに感謝している。
もし、他の男の子モンスターと同じように世界に放られたらモンスターの本能が薄い俺なんてすぐに殺されるか、ハンターに飼殺されるのは目に見えている。
サーヴァントゲーム。
それは神々の暇つぶしのゲーム。
ランダムに選んだコマを自分の世界に引き込んで争わさせる迷惑なゲーム。
俺はそれに選ばれたコマなんだとさ。
そんで今日はその説明をくれた神様が詳しいことを話すために来たんだってさ。
このすべての男の子モンスターが生まれる聖女の子モンスター・エンブリオの住処に。
「やー久しぶりだね、きゃんきゃん君。」
「お久しぶりです、ルドラサウム様。」
俺は応接間にいる小さなクジラに礼を言いながらお茶を出す。
このクジラが俺をコマに選んだこの世界の創造神ルドラサウム。
なによりも混乱を好み、娯楽を求めている。
実際は2キロを超すクジラだけど、ここに来る時はいつも小さなクジラの姿。
だけど小さいからって油断できない。
俺がモンスターになった影響なのか、目の前の存在に絶対に逆らえない感覚がある。
ルドラサウムはそんな俺の態度につまらないとぼやく。
最初の頃はいろいろと混乱して喚いていて、この神様はそれを面白がっていたからな。
このくらいの意趣返しはさせやがれ。
「それで今日はサーヴァントゲームの詳しい説明と君に加護を与えるために来たんだ。」
そう言ってルドラサウムは紙束を渡してきた。
それはどうやらサーヴァントゲームの詳しい説明のようだ。
だいぶ分厚いな、あとで読むか。
ルドラサウムは俺がその紙束に視線を落としている間に、加護を与えたのかキラキラと輝く粒子を俺にかける。
「はい、加護は完了。詳しい内容もそれに書いてあるからあとで全部読んでよ。それじゃね。」
ルドラサウムはそれだけ言うとさっさと帰って行った。
せっかく淹れたんだからお茶ぐらい飲んでけよ。
こうやって俺はあっさりと加護を貰った。
なんつーか感動もなにもあったものじゃないな。
ルドラサウムに貰った俺の説明書。
召喚される世界:ゼロの使い魔
立場:使い魔
うわーマジかよ。
俺に拒否権ないとはいえ、せめて優しいご主人様に召喚されますように!
・従来のきゃんきゃんの身体能力の5倍。
しかし召喚予定地の伝説の使い魔ガンダールブには及ばない。士官学校を卒業したエリートレベル。
微妙なレベルだな。
・召喚能力
王レベシリーズの男の子モンスターを1日に2体まで召喚できる。
連続召喚時間は24時間。それ以上だと強制的に返還され次に召喚するのに半日かかる。
これはちょっと便利だな。うまくいけば神風やオーディンみたいな最強クラスの男の子モンスターが召喚できる。
使い魔で主人を護衛するならうってつけだ。
・アイテム召喚能力
王レベシリーズのアイテム、装備品を召喚できる。しかしダメージ系アイテムを除いて、回復・装備品は自分及び主人と召喚した男の子モンスターにしか効果を及ぼさない。
アイテム・装備品は持っている懐中時計を介して召喚される。懐中時計を失くさないように注意すること。
う~ん、これは使い方が微妙だな。
回復アイテムはいいけど、ダメージアイテムの効果範囲は検証しないとこっちまで巻き込まれるし、威力が低いと使いどころを間違える。
・衣服、持ち物の強化と自己修復
生まれ持った衣服と持ち物の強度を3倍にあげた。衣服などは斬れたり、破れたり、燃えたりなどした場合は一定時間で修復される。
しかし、布の切れ端すら残らず灰になった場合は自己修復能力は発揮しない。浄化能力もあるので、洗濯する必要もない。
あ、これはありがたいかも。
どんなご主人なのかわからないし、服を買ってくれるかもしれないしな。
追伸備考欄
他の神様はよっぽど物好きじゃないと転生者に接触しないよ。
加護だけ与えてそのまま放任なんて珍しくないからゲームの説明なんてしないでいいよ。
してもいいけど、その場合は君に遣り切れない感情が向けられるからね。
あと本選会場では最初から10人くらい転生者いるよ、お助け人としてね。
それじゃ頑張ってね、ぼくに恥をかかせないでよ?
なんだろう、ずいぶんと面倒なことを押しつけられた気分だ。
こうやって俺はチートかどうか微妙な能力を与えられ、神様のゲームに巻き込まれることになった。