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アビスのタイムスリップモノ
第2弾

本編前です。
アッシュ編

初めてそいつを見たときは目を見開いた。

最近、神託の盾騎士団に入ってきたという自分と同じ年頃の少女。

それだけなら別段珍しいことじゃない。

だが、そいつの容姿が問題だった。

まず目を引くのはポニーテールに結ってある緋色の髪(俺より弱冠薄いが、リコリスの華のようだ)

左右で微妙に違う翡翠の瞳(片方は間違いなく俺の色だ)

顔立ちも俺を女にすればこうなるだろうという見本のようにそっくりだ。

「初めましてアッシュ特務師団長。本日付で特務師団に配属されました、ルカ・S・レライと申します。以後、お見知りおきを。」

そう言って、礼儀正しく挨拶するこいつは見れば見るほど俺にそっくりな奴だ。

俺はそいつの存在に脅威を覚えた。

俺そっくりのこいつが、ヴァンがまた新しく作ったレプリカじゃないのか?バチカルのあのひだまりだけじゃなく、やっと地位を確立できてきたこの場所まで奪うんじゃないのか?と・・・

 

 

 

よく考えりゃ、あいつが原因じゃないか!!

 

 

 


・・・・・・だというのは杞憂以外の何者でもなかったな!!!(怒)

月日が流れ、あいつは俺の副官になるまで昇進した。

ルカはよくやっている。

俺の副官としての仕事もよくこなしてくれている。

仕事時間中は、真面目に取り組んで一切の不備がない。

ダアトではあまり意識されていない王侯貴族に対するマナーも完璧だ。

まさに理想の副官と言える。

・・・・・・・・・・・・・・・・・仕事時間中はな!!!!!

なんなんだ、あいつは!

就業時間が終了したと同時にハイテンションで騎士団内を闊歩!さりげにアリエッタの魔物と仲良くなって、昼寝をする姿の目撃情報は一度や二度じゃない。

ときには俺やルカの弟だというシンクも巻き込んでの集団昼寝にヴァン虐め!(しかもやり方がえげつねーし、自分がやったという証拠を一切残していない。)

しかも・・・しかも!どこで入手したのかしらねーが、俺が被験者のルーク・フォン・ファブレだと知ってやがる!!

「いや、普通にその髪の色と目の色で王族だと判断できるでしょ。しかもアッシュ師団長が神託の盾に来たの10歳ごろ。当時行方不明になったキムラスカの公爵子息も10歳で、おまけに記憶喪失。ここまで符号が合えばちょっと頭の良い人なら気づくよ?」

「本当にね。それに気づかないなんてまわりの奴らの目は節穴だよね。」

「シンク・・・そこまで言うことじゃない、です。きっと、アッシュのことを・・・王族の・・・えっと・・・ご・・・ごらくいん?だと思っているです。」

「あ、そういう見方もありか。よかったですね師団長。まわりが自分をルーク・フォン・ファブレだと思わない要因の一つが掴めた(ような)ものです。」

俺の目の前ではルカ、シンク、アリエッタが好き勝手ほざいてやがる。

ヴァンに誘拐されてから、監視に洗脳紛いのレプリカへの憎悪の植えつけ、ダアトからそう離れられないように師団長なんて面倒な肩書きまで押し付けられて、バチカルに戻ろうにも戻れねぇ状況が出来上がっている。

手紙で俺のことを知らせようにも、俺が出す手紙は全部ヴァンが中身を改めてチェックしてあるからおいそれとできねぇ。

キムラスカの王族の特徴である赤い髪と目も、ダアトじゃ珍しい色扱いで、仮に王族だと気づいてもらってもアリエッタが指摘してきたような事で、通報しようとする奴もいねぇ。

最近では六神将・鮮血のアッシュという二つ名までつきやがった。

ルカが特務師団に入ってから、こういう指摘はズバズバ言ってきやがる。

俺も最初はレプリカに居場所を盗られたと考えていたが・・・考えりゃ、俺の逃げ道を塞いでるのはヴァンの野郎じゃねぇか。

今じゃ俺の憎しみの矛先はヴァンのほうに向いている。

作られたばかりのレプリカは赤子同然で、俺もそれを知っていたのになんでレプリカをあんなに憎んでいたのか自分でもわからねぇな。

ルカにいろいろと突っ込まれて、俺もまわりが見渡せるようになったと自覚している。

あいつが来るまでの俺はギスギスしすぎて、無駄にまわりを威嚇してたからな。

こうなってくると、レプリカのことが俺の心にのしかかってくる。

ヴァンの奴は俺の代わりだと言っていた。

しかも足しげく通って自分に傾倒するように仕向けているらしい。

俺はそれを想像して、なぜか頭にきた。

あの髭野郎如きが俺のレプリカを良いようにするのが、かなりムカつく。

俺の死が予言に詠まれていて、あいつがそれを代わりに引き受ける。

そう聞かされてきたが、そいつが本当か嘘かなんてもうどうでもいい。

俺のレプリカを利用しようとしてんだ・・・ヴァンにはそれ相応の報復を受けてもらおうじゃねぇか。

「ルカ、シンク、アリエッタ。」

俺は3人に声を掛ける。

3人とも俺がなにを言いたいのか察したみたいで、ヴァン虐めの計画をするときの顔になっている。

「俺の計画に乗らないか?」

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