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誰にも囚われない、自由な人・・・

彼の人を思い出させる人・・・

それが彼の第一印象。
 


.hack//hydrangea
『悲シイ思イ出』








(昴視点)

私に優雅に一礼をする青い双剣士。

その仕草はごく自然で、本心なのか揶揄なのか全くわからない。

楚良との短いやり取りの後、突如起こった戦闘行為。

ハイドと名乗った彼は、楚良の攻撃をたやすく避けると楚良の頭を踏み台にダンジョンの屋根の部分に降り立つ。

楚良は踏まれたときに体勢を崩したみたいで、そのまま雪の上に倒れこんだ。

ハイドはこちらを見下ろして、もう一度優雅に一礼する。

「今宵はこれまでとしましょう。あなた方に夕暮竜の加護があらんことを。」

そう言って彼はそのままゲートアウトの光の環の中に消えていった。

 

 

 

 


あれからして、ほんの少しの邂逅であるはずなのに私の心の中では、司とは違う意味で彼の存在は全く色あせない。

以前、ベアさんに言われたことを確認したこともその一因であることは確かだ。

水の都マク・アヌで私は再びベアさんと対峙している。

恐らく、この間言ったことを確認しに来たのでしょう。

「ログを見せていただきました。」

ベアさんは黙って続きを促す。

私は今でも自分で見たものが信じられなかった。

「ログを信じるならば、司と名乗るキャラはこの10日間ばかりこの世界に居続けています。」

「信じたくないのか?」

私はゆっくりと首を横に振る。

「ログ自体を疑うつもりはありません。それにログインし続けているのは、司だけではなかったのです。」

システム管理者の人にそれを見せて頂いたとき、司とは別に2人のプレイヤーのログだった。

1人はBBSでも噂になっている『闇の紫陽花』ハイドランジア。

そしてもう一人は・・・

「『闇の紫陽花』・・・俺もこの間会って、直接本人から聞いた。まさか2人もログアウト出来ない奴がいるなんてな・・・」

いいえ、2人ではありません。

「3人です。」

「なに?」

「司とハイドランジアの他に、もう一人ずっとログインし続けている人がいます。」

司のように10日間やそこらの話ではない。

このゲームが始まる・・・それよりも前に存在するあの青い双剣士。

「PC名ハイド・・・『闇の紫陽花』と同じくフラグメントの頃から、ずっとログインし続けています。」

私の言葉にベアさんの顔は驚愕の一色に染まったと過言ではない顔をしている。

「ハイドが!?あいつ・・・そんなこと一言も・・・」

「ハイドを知っているのですか?」

彼のデータはシステム管理者もログインし続けていること以外、なにも解らないとこぼしていたのに・・・

「あなたは、ハイドの連絡先を知っているのですか。」

この言葉にベアさんは意外そうな顔をしている。

「知らないのか?ハイドは誰にもメンバーアドレスを渡さないことで有名だぞ?」

「え!?」

「ヘビーユーザーなら、誰でも知っていることなんだが・・・」

「あの・・・1人もですか?」

「あいつのメンバーアドレスを持っているという奴らがいたが、全部ガセ。本人から聞いても一度も渡したことも受け取ったこともない、と言っていたぞ。」

まさか・・・そんなプレイヤーがいるなんて・・・

私はどこか呆然としながら、河を見つめる。

ああ・・・水面がキラキラしてとても綺麗・・・

私の目の前を一隻の船が横切る。

その甲板では見覚えのある青い双剣士が、のほほんとこちらに手を振っている。

今私の目はこれ以上ないというほど見開いていることだろう。

ベアさんも目を丸くしている。

・・・というよりも・・・

「「ハイドーーーー!!!?」」

 

 

 

 

 

(主人公視点)

おーおー・・・なにやら昴とベアがこちらを見て喚いている。

俺はのんびりと手を振る。

いやー元気がいいなー・・・

橋の下を通過をしながらのんびり町並みを見ていると、突然誰かが船に乗船してきた。

「久しぶりだな。ハイド。」

聞き覚えのある声に俺が振り向くと、そこにはいつものスケイスメイルではなく、銀色のプレートメイルを纏ったオッドアイの重槍使いがいた。

「アルビレオ!よく俺がここにいるの解ったな。」

「ここ数日・・・おまえの居場所を特定するのは骨が折れたぞ。」

アルビレオは恨みがましい目で俺を睨む。

「だってー俺のメンバーアドレスは誰も知らないもん。」

俺は楚良の口真似をして応える。

アルビレオはそれに嫌そうに顔をしかめる。

俺は口の端を吊り上げて笑う。

「それで?騎士団長さんが俺になんの用だ?」

わざわざ制式の鎧に着替えてまで・・・

アルビレオはしばらく黙ったままだったけど、なにか搾り出すような声でただついて来い、とだけ言った。

俺は抵抗するのも面倒だからそのままアルビレオの後ろについていく。

俺はなんとなく、これから起きることを予感していた。

 

 

 

 


あるフィールドについて、アルビレオは口を開いた。

「なぜ俺が騎士団長なんだ?紅衣の騎士団の団長は昴というキャラのはずだ。」

そう、普通の一般プレーヤーは騎士団と聞くと『紅衣』の方を連想する。

だけど、俺は『普通』じゃないから知っている。

紅衣と対をなす騎士団を。

「誰が紅衣と言った?俺の言ったのは『碧衣の騎士団』。CC社のデバックチームのことだよ。」

「!?」

俺の言葉にアルビレオは息を呑む。

俺は苦笑すると、歩き始める。

「俺はこの世界のことをほんの少し知っている。『黄昏の碑文』に出てくる光と闇の騎士団があるんだ。この世界は碑文を基にしている。そういう騎士団があってもおかしくない。それに・・・」

俺はアルビレオに指差した。

「あんたの格好はスケイルメイルのはずなのに、今はプレートメイル。あきらかにおかしいだろ?」

ま、PCの外観を変えるアイテムがあれば可能だけど、そんなレアアイテムは大抵イベント賞品。

そして、最近はそんなイベントは起きていない。

俺の言うことに、アルビレオは深くため息を吐いた。

「おまえ・・・そんなキャラだったか?」

闇の紫陽花と話している気分だ。

そうアルビレオがこぼす。

うんうん。いい勘しているよ。

「俺は俺。他の何者でもないよ。俺は確かに”ここにいる”んだ。」

俺は司と同じように端末の前にいない。

俺には司のように帰るべき肉体があるのかすら解らない。

それでも、俺は”ここにいる”。

この世界に確かに存在する。

俺はまっすぐにアルビレオを見る。

アルビレオはいろいろと難しい顔をしている。

俺は顔に筋肉を緩めると、にっこり笑った。

まぁ、デバックチームのアルビレオからすると、この事実は否定したいよな。

俺は再び歩き始めた。

それからはアルビレオと一言も喋らなかった。

 

 

 

 

「あれが鉄アレイのモンスターか・・・」

今、俺とアルビレオの眼下に4人の重槍使いと1人の呪文使いがいる。

重槍使いたちはガーディアンに全てキルされ、”おばけ”になってその場に横たわっている。

「それで?アルビレオは俺をここまで連れてきて、司を見つけて、どうしたいんだ。」

「・・・司の意思を確かめる。何故おまえと司がここにい続けることが出来るのか。」

アルビレオが一歩踏み出そうとした時、空間から突然猫のPCが現れた。

こいつが・・・マハ。

黄昏の碑文 八相の一つ『誘惑の恋人』

マハとアルビレオの会話。

俺は口を挟まなかった。

俺が口を挟んだところで、ややこしいことになるだけだから。

マハが司が連れているのとは色違いのガーディアンを呼び出し、アルビレオがヴォータンの槍をマハに向ける。

俺も双剣を構えて対峙する。

「削除する!」

アルビレオのヴォータンの槍がマハに届く前に、槍が突如砕けた。

神・・・モルガナの使いに槍を向けたから。

綺麗な・・・なにか楽器のような音・・・

「ヴォータンの槍が・・・」

槍が砕けて呆然とするアルビレオに、ガーディアンは容赦なく攻撃の手が伸びる。

俺は双剣じゃ歯が立たないと思い、スノーフレークを呼び出す。

ガーディアンの触手がアルビレオに届く前に、切り裂く。

「ハイド・・・その大鎌はハイドランジアの・・・」

流石にアルビレオは、この大鎌を知っていたか。

俺はガーディアンとマハから目を離さず、口を開く。

「俺とハイドランジアは、2人で1人。俺はハイドランジアで、ハイドランジアは俺。それでも俺は俺。」

タツキなんだ。

「あとで・・・あとで事情をたっぷり聞かせてもらうぞ!」

アルビレオは残ったヴォータンの槍を構えて、マハたちを見据える。

・・・ちょっと待て。

「他に武器持ってないのか!?」

俺が怒鳴ると、アルビレオも半ば自棄になって叫ぶ。

「仕方ないだろう!今日はデバッカーとしてここに来たんだからな!!」

アルビレオと俺はガーディアンの攻撃から避けながら、なんとか話をする。

ガーディアンの攻撃は速くて、避けるのが精一杯だ。

そうやって凌いでいるうちに、俺の息が上がり始めた。

やばい・・・俺はアルビレオと違って自分で体を動かしている。

コントローラーを操作しているアルビレオと違って、体力に限界がある。

「おい!?どうしたんだ、ハイド!?」

「くっ・・・はぁはぁ・・・俺は・・・他の奴らのように精神的に・・・疲れるんじゃなく・・・体力的にも疲れるんだ・・・とっととこいつをたたむぞ!」

俺は大鎌を振り回す。

この技は今の世界にないけど・・・一か八か!

「蒼天大車輪!!」

大鎌を大きく振り回し、ガーディアンの触手を切り裂く。

『R:2』のアーツだけど、出来た!

俺は全部の触手を落とせたかと思ったが、1つだけ取りこぼしてしまった。

それはまっすぐにアルビレオへと向かっていった。

「アルビレオ!!」

このままじゃアルビレオが・・・

アルビレオに触手が届く直前に、なにかがアルビレオの前に立ちはだかった。

それは赤いワンピースを着た・・・リコリス!?

リコリスはアルビレオの前に両手を広げて立ちはだかる。

触手はリコリスの目前で砕けた。

「リコリス・・・」

アルビレオが呆然とその名を呟く。

そんな・・・リコリスは背景の華に・・・

 


 

リコリスは完全に消えてないで!!

 


 

スノーフレークのそんな言葉が蘇る。

リコリスはアルビレオの折れた槍に同化するように消えると、ヴォータンの槍が再生した。

いや、再構成された。

刃すらも彼岸花のように、赤い三叉の槍。

あの時のスノーフレークの言葉は、リコリスは背景の華になったんじゃなく、スノーフレークと同じようにアルビレオの牙になることを選んだってわけかよ!?

「アルビレオ・・・その槍をどうする気だ?」

俺は口の端だけ吊り上げて笑いながら言った。

アルビレオはしっかりその槍を握ると、ガーディアンたちを見据える。

「俺はこの世界を愛している。だから、この世界を脅かす輩を許さない!」

「・・・上等。」

俺とアルビレオは再びガーディアンに向かっていく。
 

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