[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
謎の人物は基本的にソロで動く。
俺がこの世界で『謎の人物』をロールするためにそれは覚悟してた。
けど、2つの姿が出来るなら
ハイドランジアは『謎の人物』
ハイドは『一般のプレイヤー』
それが可能なはず。
わざわざ2ndキャラを作らなくても2役ができる。
なのに、厄介な職業のせいでハイドは強制的に『ソロオンリーのプレイヤー』をロールしなきゃいけない。
とりあえず、今日は目的は・・・
.hack//hydrangea
『始動』
俺はあるエリアに来ていた。
フィールドタイプは荒野。天気は晴れ。夜。
俺の目的はある人物を見つけること。
一発で見つかるなんて思っていない。
もしかしたらインしてないかもしれない。
それでも俺は探す。
別に今日一日だけじゃないしな。
そうして俺が荒野の丘に登ったところで見つけた。
オッドアイの瞳の連星を。
俺は彼の姿を見下ろしながら、どうやって声を掛けたものかと考えていると向こうのほうが俺に気づいた。
「久しぶりだなハイドランジア。」
(アルビレオ視点)
それは神秘的な光景だった。
月の光を背に浴び、黒のローブをなびかせるその姿。
俺には以前一度だけ会ったプレイヤーのその姿が、この世界のモデルとなった叙事詩・・・黄昏の碑文の中に登場する闇の女王ヘルバのように見えた。
だけどヘルバは女王。男プレイヤーにその表現は失礼だったか。
俺は自分の考えに苦笑しながらも声を掛けた。
確か名前は・・・
「久しぶりだなハイドランジア。」
紫陽花の名を持つ者。
「久しいな連星。」
一度しか会ったことのない華。
ここからは逆行でシルエットしか見れないけど、間違いなく彼だ。
初めて会ったときからどうにも彼には引っ掛かりを感じていた。
その引っかかりは当たり前すぎて、当然のように見逃していた。
いくら新米でもデバッカーチームの1人がこれじゃ立つ瀬もないな。
「ハイドランジア!俺の記憶が正しければ、君のPCは仕様外のはずだが?どういうことかな?」
この世界のルールを破るというなら、俺は君を許しはしない。
俺の言葉にハイドランジアは特に同様も見せず飄々としている。
「はて?我は気が付けばこの姿なのだが?説明を求められても説明しようもない。」
「ふざけるな!PCを作るときには必ずプレイヤーがエディットする。気が付いたらなんてことはありえない。」
こいつ、プレイヤーじゃなくて放浪AIなのか!?
いや・・・それにしては自我がありすぎる・・・
ハッカーなのか?
「これは失礼。言葉がたりなんだか。我は気が付いたらこの世界に迷い込んだ迷い人のようなもの。我自身、姿は決められぬ。」
「そんなことあるわけないだろう!!」
俺は怒りのままに槍を振り上げる。
ハイドランジアはそれに臆するわけでもない。
滑らかにその唇を動かす。
まるで生きているみたいに。
そう考えてしまって俺は慌てて頭を振る。
そんなはずはない!この世界は確かに愛着もあるし愛しいが、あくまでデータの世界だ。
生きているのは、端末の前に座っているプレイヤーだけだ。
「ふむ・・・汝が信じようと信じまいと、これは事実。それに我は汝を観に来ただけのこと・・・」
「観に来た?」
なんだ?一体俺の何を観に来たんだ?
ハイドランジアは手を口元に持っていき、ただクスクスと笑うだけ。
「大したものではない。連星がいづれ出会う儚き華の行く末を観たいだけ・・・」
「華?」
一体なんのことを言っているんだ?
「まぁ、その華とはまだ出会う時期ではない。汝がどのような道を選ぶのか、見届けさせてもらう。」
それからハイドランジアは立ち去ろうとしたが何を思ったのか、再びこちら向き、
「1つだけ助言を・・・後悔のなきように・・・」
そう言って、今度こそ踵を返した。
「待て!!」
俺は気が付いたら大声で彼を呼び止めていた。
ハイドランジアは俺の声に足を止め、ゆっくりとこちらを振り返る。
「ハイドランジア・・・おまえは一体何者なんだ?」
一般PCなのか、放浪AIなのか、ハッカーなのかもわからない。
さまざまな憶測が俺の頭の中で飛び交う。
「我か?我は・・・」
ハイドランジアの唇がリアルと同じように形作る。
「我は傍観者で・・・」
彼の動き全てがまるで・・・
「助言者で・・・」
まるで・・・
「敵対者だ・・・」
本当に生きているようだ。
ハイドランジアは言うだけ言うとさっさとその場から立ち去ってしまった。
彼の言葉は矛盾しかないもの。
それでも彼が口にすると、こんなにも簡単に心に滑り込んでくる。
俺は呆然としてしまったが、すぐに我にかえって彼がいた場所へと向かう。
俺がその丘を登ろうと碌に前を見ずに走るとどうなるかなんて解りきっていることだ。
ドスンッ
「うわっ」
「いって!!」
俺はどうやら他のプレイヤーと正面衝突してしまったようだ。
「す、すまない!」
「う~(TT)もう少し前見て走ってくれよ。」
青い双剣士の少年はそう言って膨れながら、立ち上がった。
俺は周りをきょろきょろ見渡す。
もうハイドランジアの姿はどこにもなかった。
「・・・すまない。あ、その・・・この辺で黒いローブを着たPCを見なかったか?」
俺は気が付いていたら、目の前の双剣士の少年に尋ねていた。
(主人公視点)
「・・・すまない。あ、その・・・この辺で黒いローブを着たPCを見なかったか?」
アルビレオにそう聞かれて、俺はそ知らぬ態度をとった。
「へ?黒いローブのPC?」
はーい、ハイドランジアこと現在ハイドでーす。
実はアルビレオから見えなくなってから急いでローブを脱いだのだ。
そんで丘から降りて、アルビレオと偶然ぶつかった・・・と見せかけた。
今回の主目的は、ハイドランジアを正式に『謎の人』としてデビューさせること。
これは第一歩だ。
これで確実にアルビレオには、ハイドランジアが『得体の知れない』『謎の人』などに認識されたはずだ。
そしてもう一つが『アルビレオにハイドを会わせる事』。
「いや・・・見てないなら別にいい・・・」
アルビレオは俺の返答に少々残念そうに呟く。
俺は今にも立ち去りそうなアルビレオを見て、彼が絶対に食いつく餌を撒く。
「黒いローブのPCって『闇の紫陽花』のことか?」
俺の言葉にアルビレオは足を止める。
「『闇の紫陽花』?」
「あぁ、あんた知らないのか?最近のBBSで話題になった奴。W・Bイェーツって自称吟遊詩人がそのレス見て、そいつのこと『闇の紫陽花』なんて評したんだ。」
BBSの話は俺がここに来る前に偶然見つけたもの。
黒のローブの奴の話題で、俺はそれにちょっとカキコして、そいつの名前はハイドランジアだと教えたんだ。
まさか、あの有名吟遊詩人が俺に『闇の紫陽花』なんてあだ名くれるなんて思ってもみなかったぜ。
「いや・・・そうか。わかったありがとう。」
「にしても、あんた『闇の紫陽花』に会うなんてすげーな。俺もタウンで一回会っただけだぜ?」
「会ったのか!?」
俺の言葉にアルビレオはすぐに食いついてきた。
「あ・・・あぁ、珍しかったから声を掛けたんだ。随分古風な喋り方だよな、あいつ。パーティ組まないかって言ったけど断られちまったし。」
ソロプレイオンリーなのかね~♪
俺はのんきにそう言うと、アルビレオはなにか考える仕草でまったく動かない。
俺の話聞いてるのか?
「どこのタウンだ?」
あ、やっと起動した。
「俺が会ったのは水の都マク・アヌ。そこの路地裏だよ。」
俺の言葉聴いて、アルビレオはまた思考の渦。
「ありがとう。俺の名前はアルビレオだ。」
「どういたしまして、俺の名前はハイドだ。」
アルビレオはゲートアウトで光の輪に包まれる。
そして、俺はアルビレオが消える直前に"囁いた"。
「またな。連星さん・・・」
アルビレオが俺の顔を凝視しながら、また間抜け面さらして視界から消えた。
これで今回の目的の2つ目コンプリート!
1つ目は『謎の人デビュー!』
2つ目は『ハイドくん、アルビレオと初お目見え!』
ちなみに2つ目の目的の副題は『アルビレオをからっちゃおう!』である。
前々から考えてたことだけど、今回のこれは憂さ晴らしも入っている。
アルビレオに教えた情報は半分嘘で半分本当。
事実を知るのは俺一人。
他の人たちにはタチ悪い!なんて言われそうだけど、結構面白い♪
それでも俺の憂さは完全に晴れたわけじゃない。
俺は双剣を装備すると、近くの魔方陣に足を向ける。
このエリアのレベルなら俺にも丁度いいからな。
憂さ晴らしの続き+レベル上げを決行♪
その日、そのエリアのフィールドではモンスターを確認することは出来なかったらしい。
おまけ♪
「なんなんだあいつはー!!!」
「はいはい、バルちゃんも落ち着いて。凛々しい騎士さまになるんじゃなかったのか?」
水の都マク・アヌ。
バルムンクは俺の隣で喚いている。
理由は簡単。
俺がハイドランジアとしてバルムンクの前に出たから♪
いや~バルムンクの反応が面白くてさ~・・・ついついからかい過ぎた。
そんで、"ハイド"が今バルムンクの愚痴を聞いてるわけなのだ。
「今度会ったら覚えてろー!闇の紫陽花ーーーーー!!!!」
俺はその叫びを聞いて、心の中で苦笑した。
「ま、せいぜい頑張ってな♪」
この世界に1輪の『華』が咲いた。
闇より生まれ、光の中で咲き乱れるかの華・・・
矛盾だらけのその言葉はなによりも真実を語る・・・
2つの仮面を持つもの・・・
光と闇の仮面をもつもの・・・
「我(俺)は汝(あんた)の
傍観者であり
助言者であり
そして
敵対者だ。」