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見滝原町。
この町には今、ある都市伝説がひそかに蔓延している。
絶望を、憂鬱を癒してくれる白き魔女がいる。
一体何時ごろから流れはじめたのか、中高生の間には確実に広がっているその噂を、鹿目まどかも美樹さやかも耳にしていた。
「でも本当にいるのかな?」
「さぁ?でも噂にしては結構な目撃者とか体験者らしい人がいっぱいだよね?」
まどかとさやかはそうやってその噂をしていて、二人はもう一人いた自分の友人に……というか私に話題を振ってくる。
「あ~、まぁいてもいいんじゃない?悪いことをやってるわけじゃないしさ。」
私は苦笑しながらそう言うしかなかった。
白き魔女……自分を変に乏しめるのも、褒めるのも微妙でしかない。
「え~?夢がないよねぇ紅は。」
「さ、さやかちゃん。でもあたしは会ってみたいなぁ、その魔女さんに。」
さやかはつまらなそうに私は見て、まどかはその魔女に会いたいと言ってくる。
ヲイヲイ、ホープディス(私)に会いたいほどなんか疲れていることがあるの?
「まどかぁ、その魔女に合う条件は絶望していることだって話だよ?」
「あ、でも上条君は交通事故で手が使えないから、それで落ち込んでいるんじゃ……」
「いやいや恭介の奴、作曲に夢中で入院中は思う存分やるんだって活き活きしていたわ。」
「あ、あははは。上条君って結構逞しいんだね。」
「ま、わたしらには縁のない話だよね。」
さやかの言葉に私もうんうんと頷いておく。
この二人に絶望なんて言葉は似あわない。
絶望にさらしたくもない。
まどかもさやかも、ここにはいない仁美も私の大事な友達なのだから、絶望に堕ちても助けたい。
私がそんなことを考えていたら、近くに魔法少女の気配を感じた。
この町の魔法少女である巴マミの気配かと思ったけど、それとは違う魔力の波長。
私はこのままじゃこちらが嗅ぎ付けられると思い。
いったん、二人と別れて人のいない路地裏で魔女に転化する。
フードで顔を隠し、箒に乗ってその魔法少女がいるであろう場所まで飛ぶ。
その魔法少女は高層ビルの屋上にいた。
灰色を基調とした服に、長い黒髪の彼女は静かに見滝原の街を見下ろしている。
私は彼女の目の前に箒乗ったまま現れる。
一応、防衛のために杖を持って、かなり強固な見えない障壁を張り巡らしながら……
「こんにちわ、新しい魔法少女さん。」
目の前の魔法少女はいきなり姿を現した私に警戒の目で見てくる。
彼女の持つソウルジェムが私に反応して光り輝いて、彼女は私の正体に気づいたようだ。
「私は希望の魔女、ホープディ……!!」
ガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!
私の自己紹介は途中で遮られた。
目の前の魔法少女がいつの間にか握られていたガトリングガンによって。
って、ガトリング!?
魔法少女なら、もうちょっと『らしい』ので戦おうよ!?
マミといい、杏子といい、この子といい。なんでこんな物騒なもので戦うのよ!?
事前に障壁を張っていて助かった。
もしそのままだったら、今頃私は蜂の巣だったわ。
私は攻撃系の魔法はほとんど使えないけど、支援系補助系はかなりのものだと自負している。
なんせ攻撃手段は身体強化して杖でぶっ叩くしかできないしね。
そうやって私は障壁を維持しながら魔法少女の銃弾を防ぎ続ける。
くそ、この子どんだけ銃火器持ってるのよ!?
次から次へと繰り出される武器に私は辟易としながらも耐え続ける。
ときどき投げつけられる爆弾も……っていうか、本当に魔法少女らしい戦いしようよ!?
私は若干涙目になりながらも、やっぱり耐え続ける。
魔法少女は私に攻撃が届かないと悟ったみたいで、いったん攻撃を中止してくれた。
「あなた、なんなの?」
魔法少女は感情を悟らせない瞳で問いかけてくる。
私は衝撃で乱れたローブの端を簡単に整えて、居住まいを直すともう一度自己紹介をした。
「私は夢と希望の魔女、ホープディス・プリフィケーション。あなたの名前を聞いてもいいかしら?」
「暁美 ほむら。」
魔法少女……ほむらは銃を私に向けたまま静かにそう言ってくる。
や……やっと自己紹介できた。
私は気づかれないようにため息を吐きつつ、彼女のソウルジェムに杖を向けつつ、穢れを回収する。
ほむらはそれに驚いた様子で、私をにらむ。
「私は絶望と憂鬱を取り除くことができるわ。またソウルジェムを浄化したかったら、私の結界まで来てごらんなさい。歓迎するわ。」
最初に力を見せて、私の有用性をアピール。
この子がどんな力をもっているのか解らないけど、これですぐに私を殺すのは早計と思ってくれるはずだ。
ん?巴マミはどうかって?
あの子はどんなに魔力を回復させてもライフル両手に追いかけられます。
おかげで障壁の魔法に関してはだいぶ腕が上がりました。
杏子とは時々お茶会するほどなのにー!!
ほむらは私を探るような目で見てくるけど、私を殺すことに対してメリットを感じなくなったようだ。
「あなた、キュウべぇになにを願ったの?」
「あら?そのことを知ってるんだ。それじゃソウルジェムのことも?」
「全部知っている。キュウべぇの目的も正体も、全部。」
「ふーん、それでも魔法少女になったのか、それとも魔法少女になってから知ったのかはわからないけど、強いのね。」
普通なら絶望に狂って魔女になるか、自殺するのが大半なのに。
「まぁいいや。あなたになら話してもいいかな?私の願いは単純な話。」
そう言って私は一冊のノートを取り出した。
中には私のことが……魔女、ホープディスのことがびっしりと書き込まれている。
私が書いたものだ。
「私はキュウべぇに魔女にしてって願ったの。」
「!?……なぜ?」
「だっていつか絶望して本能だけの魔女になるくらいなら、最初から魔女になったほうがいいじゃない。」
キュウべぇの奴は、上位世界(現実世界)から記憶を持ったまま転生した私の因果に気づいて、逃がす気なんてなさそうだったし。
私が願ったのは本当に簡単なことだ。
ノートに自分がなりたい魔女の設定を書き込んで、キュウべぇに何度も質問して矛盾を極力排除して、このノートに書いてある設定の存在にして欲しいと願っただけなのだ。
まぁ、設定を切り詰めるのに一か月は掛かったけどね。
誤字脱字がないかチェックしたり、意味が通らなかったり、曲解されないか何度も読み返したり苦労したわ。
最強設定はさすがにできなかったから、私の因果の大きさをほとんど支援にまわしちゃった。
いわゆるH×Hの『制約と誓約』に似たものだ。
おかげで補助、支援、防御に関しては軽くチートなのだ。
ま、魔力を増幅させるシステムも織り込んでいるからそんなに困っていないけどね。
私は全てをほむらには話さず、ただ魔女になることを願ったとしか伝えない。
こっちの弱点までバレちゃたまらないからね。
「……そう。あなたがなにを目的として魔女になったかは知らないけど、私の邪魔はしないでもらうわ。」
いえ特に目的なんかありません。
キュウべぇがしつこすぎたので、ちょっと意趣返しのつもりでした。
「あらあら、私としては仲良くしたいのよ。ソウルジェムが穢れたら私のところに来てね。」
そう言って、私はそのまま箒で飛び去っていった。
暁美ほむら。
なかなか業が深そうな子だったな。
私と暁美ほむらの邂逅はこれでひとまず終わった。
「暁美ほむらです。よろしくお願いします。」
なーんて思っていたら一週間後に転校生として来ちゃいました。
しかもまどかを熱い目で見てる。
なに?ほむらってそっちの気でもあるのか?
私は友人の貞操を思わず案じてしまったのは仕方がないと、思わずにはいられませんでした。