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俺の名前は龍樹。

伯爵に製造されたアクマだ。

アクマと言っても俺は殺しなんか好きじゃない。

むしろ嫌いだ。

そんな善良な俺ですが・・・ぶっちゃけ今ピンチです。
 


D.Gray-man~逆十字の使徒~
『龍樹、再会すぐに死闘を演じる!?』

 

 

 

ドガァァァァン!!

俺がいた場所が激しく抉れ、その場所に白い髪の少年がイノセンスと思われる左腕を発動させたまま立っている。

「神の十字架よ。哀れなアクマに魂の救済を・・・」

そう言って突っ込んでくる少年エクソシストの攻撃を、俺は慌てて避ける。

「俺は・・・まだ破壊されたくねぇんだぁぁぁぁ!!!!」

俺の絶叫がロンドンの夜の闇の中に響いて消えていった。

なんでこんなことになったんだろう・・・

 

 

 

 

あれは数時間前のことだったろうか。

俺がこの町に着いたばかりで、壊されたギターを買おうと人通りの少ない裏通りの楽器屋を探していた時だ。

こういうところのほうが、掘り出し物が多いからな。

そして、やっと楽器屋を見つけたところに白髪の少年に声を掛けられたんだ。

「こんにちは、アクマさん。」

それと同時に仕掛けられる攻撃。

滅茶苦茶早くて俺は避けるのが精一杯だ。

「うわっエクソシストかよ!?」

こんなところで会うなんて最悪だー!!!

なんで人間形態の俺をアクマだと見破りやがった?

しかもこいつエクソシストの証のコートもローズクロスも着てねぇじゃん!?

俺は少年の攻撃を全て紙一重にかわし続ける。

「あなたの魂を救済します。大人しく破壊されてください!!」

「そう言われて、誰がハイと頷くんだー!!?」

こんな感じに何時間も追いかけっこしていて、気がついたら夜になってました。

 

 

 

 

 

俺は少年の攻撃を避けながら考える。

俺はアクマだから、人間より体力は何倍もある。

しかし、いくら神の使徒であるエクソシストでも、人間に変わりはない。

なのに・・・なんでこいつは俺と数時間鬼ごっこしてて、息のひとつも切れてないんだー!?

ホントに人間か、コノヤロー!!

「いい加減、観念してください!!」

「嫌だって言ってるだろ!?」

この受け答えも、もう何度目なのか数えるのもヤダ・・・

俺は必死にこの状況を打開する術を模索し続け、あることに気づいた。

少年が連れている金色のゴーレム。

どっかで見たことあるけど、明らかに他のエクソシストが連れているのと違うやつだ。

そして、通りをのんきに歩いているデブ猫・・・いっちょ賭けてみるか。

俺はなんとか少年の隙を見つけ、横をすり抜けると同時に金色のゴーレムを捕まえる。

「!?ティムキャンピー!!」

へー、ゴーレムに名前なんかあるのか。始めて知ったな。

俺はそのゴーレムの尻尾を掴んで、ブンブン回す。

ゴーレムが目を回すか知らないが、噛み付かれたら適わないからな。

「ティムをどうする気なんだ!!」

少年が俺を思いっきり睨み付けてくる。

俺はそれにニヤリを笑って返す。

「こうすんだ、よ!」

俺はゴーレムを思いっきりデブ猫に向かって投げつける。

そんで・・・

ぱくっ

そんな擬音が聞こえてきそうなほど、至極あっさりデブ猫がゴーレムを咥える。

「あ!?ティムキャンピー!!」

ゴクンッ

デブ猫がゴーレムを飲み込んだ。・・・へ?飲み込んだ?

「うわー!!?ティムキャンピー!!!?」

「最近の猫は雑食だな~・・・」

デブ猫は俺たちのほうを見て、ニッと笑ったかと思ったらそのままトットコ行っちまった。

咥えてどっか行くだろうと思っていたけど、まさか食うとは・・・

俺はちらっと少年を見る。

どっかで見たことあるような気がするが、この際それはいい。

「追っかけなくて良いのか?」

俺が一言そう言うと、少年ははっとした顔になり、急いで猫を追いかけ始めた。

俺はそれをひらひらと手を振りながら見送る。

・・・・・・あぁ、思い出した。

3年前にあった少年か。いや~デカクなったものだ。

俺は感慨に少しふけりながら、少年が走っていった方向とは逆の道を歩き出す。

とっととギターを買って、早いとこ路銀稼いで、他所の町に行ったほうがいいな。

 

 

 

 

あの少年に会った翌日。

俺は町の広場の噴水前で歌う。

俺の前には人だかりが出来ている。

足元のギターケースの中に次々と投げ込まれるコインや紙幣。

この規模の町にしては結構集まっている。

あと2~3日くらいここで稼いだほうがいいな。

リナリーに返す借金ももうすぐ貯まりそうだし。

俺は歌いながら周りを見渡す。

今にも崩れそうな古びた教会。

あそこから微かに同胞の残り香を感じる。

そして・・・

「こら待て!」

「わわわわ!どこ歩いてるんだ!?」

「うわっいてっ!!」

常人には聞こえない、教会内の声。

昨夜の少年エクソシスト・・・まだデブ猫を捕獲できていないらしい。

しかし、あのデブ猫は本当に猫なのか?エクソシストをあそこまで翻弄するなんて・・・

俺は内心ため息を吐きながら、声を張り上げる。

頑張れデブ猫!俺が路銀を稼ぐまで頑張ってくれ!!

・・・その前にリナリーへの借金を返す金を稼がねぇとな・・・

 

 

 

 

あの後、俺は路銀を十分稼いだ。

明日はリナリーに返す借金を稼がなきゃな。

俺はそう考えながら暗くなった夜道をゆったり歩く。

昨日はエクソシストに追いかけられて散々だったもんなぁ~・・・

そして俺が教会の前を通りかかったとき、なにかが猛スピードで俺の頭上を通過した。

ドガァァン!!!!!

「へ?」

さっき吹っ飛んできたのって・・・昨日の少年エクソシスト?

なんか知らない女性を抱えてたけど・・・

俺は呆然と吹っ飛んできた方向を見ると、レベル1のアクマが教会に入っていく。

・・・あいつに吹っ飛ばされたのか。

俺はアクマが教会の中に消えていくのを見届けると、再び宿に向かって歩き出そうとしたがすぐに足が止まった。

・・・だめだ。首を突っ込まずにいられるかー!!!

俺はすぐに踵を返して教会の中に入っていく。

いくらアクマの俺でも、顔見知りがあんな風に吹っ飛ばされていったのを黙ってみているほど非常になりきれない。

こういうところが、アクマらしくないんだよなぁ俺。

 

 

 

 

 

え~っと、俺が教会の中に入ってすぐになぜか警察の団体さんに出くわしちゃいました。

うっうっうっ・・・ただあのエクソシストのことが気になっただけなのに。

俺は両手に縛られている縄を見ながらため息一つ。

「警部さ~ん。俺事件となんの関係もないからこの縄ほどいてくれよ。」

俺は縛られている両手をぶんぶん回しながら訴える。

ちょっと嘘。この事件は俺の同胞がやってんだから関係はばっちしある。

「うるさい!!こんな夜中に教会内をうろうろしていて、自分が怪しくないとでも思っているのか!?」

はい、正論ごもっともで。

俺は諦めて大人しく警官隊に同行する。

暴れるのも面倒だしな。

「コラー!おまえら何してる!?」

突然警部が怒鳴ったので、俺が顔を上げて見ると、そこにいたのはまさに昨日俺を追い掛け回した少年エクソシスト!!と見知らぬお姉さん。

そして、俺の同胞・・・

警部さんたちはレベル1のアクマに銃弾を浴びせるが、そんなもんが効くわけがない。

俺は咄嗟に縄を力任せに引き千切って、周りにいた警察官を2~3人を柱の影に突き飛ばして自分も同じように柱の影に隠れる。

次の瞬間起こったのは警官隊が撃っていたのとは違う銃声。

そして、なにかが砕け散る音。

俺は突き飛ばした警察官を見る。

突き飛ばしたとき、頭を打ったのか気絶しているけど大丈夫なようだ。

俺はほっと息を吐き、そして助けられなかった人たちに軽い黙祷を捧げる。

いくらレベル3並の能力を持つ俺でも、あの人数を助けるのは無理だ。

咄嗟とはいえ、助けられたのはこの人たちだけ。

自分の無力さに腹が立つ。

自我を持たない同胞たちが人を殺すのは仕方ない。

自分も不良品でなければ、彼らと同じ道を辿ることになっていたのだから。

だけど、自分の手が届くなら助けたい。

人間を、同胞を・・・・・・・・そして、人間が殺されるたびに、同胞が増えるたびに悲鳴を上げる自分の心を。

「どうか安らかに ミセス・クレア」

ふと耳にあの少年エクソシストの声が聞こえてきた。

俺はそっと柱の影から少年たちの方を見ると、今まさに捕らわれていた魂が解放されていた。

俺はそれを見て、自然と頬が緩んだ。

これでまた一つ。同胞が救われた。

俺は少年エクソシストに声を掛けることなく、教会から出て行く。

あの少年が黒の教団のエクソシストなら、またどこかで会えるだろうと予感して。

 

 

 

 


そりゃまぁ・・・またどこかで会えるだろうと予想してたけど・・・

 

 

次の日ってのはどうかと思うぞ!!?

「大人しく破壊されてくださーい!!」

「いやだって言ってるだろうがー!!!」

俺はまだ世界を旅するんだー!!

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