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ステキ三次小説です!
話の終わりに箱庭廻さまのあとがきがあります。
【Epiroge_紫陽花と揚羽蝶】
【Δ 隠されし 禁断の 大樹】
あれから。
あれから何日が経ったのだろう。
ゲームの中で、今だ発見されていないいずれロストグラウンドと呼ばれる大樹の下で座り込むハイドにはそれを知る術はなかった。
リアルの日にちなんて分からない。
リアルの時間なんて分からない。
ハイドは、彼はゲームの中で閉じ込められているから、その経過日数なんて分からなかった。
あれの日から誰とも会わずに、誰とも喋らず、過ごし続けていたからなおさらだ。
「静か……だな」
そよそよとランタイムに吹く風のエフェクトによって揺れる葉のざわめき以外に、このエリアに音はない。
「誰も来ないから当たり前か……」
ハイド以外に誰も知らないこのエリアにやってくる者なんて誰も居ない。
誰も音を立てずに、ただ心地よい静寂のみが支配していた。
誰にも邪魔されず。
誰にも話しかける必要もかけられる心配も無い。
ただ静かな一人だけの空間。
「孤独……か」
ただ思いついた言葉を、ハイドは吐き出した。
だが、その次の瞬間苦笑するように嗤う。
「こんなの……孤独じゃねえよな」
何故ならば。
彼が望めば幾らでもこのエリアから出ることが出来る。
エリアから出れば、おそらく自分を探しているであろう友人たちが居る。
話し合える相手が、接触出来る人がいる。
そんな人間は決して孤独じゃない。孤独なんかなりえない。
あの……接続を求め続けた少女の絶望には届かない。
「ぁ……は」
ハイドは額に手を当てて、息を吐き出した。
(彼女は……死んでしまったのだろうか)
あの日の事を思い出す。
幾ら話しかけても答えず、スピーカーのように騒がしい声が僅かに漏れた後、殆ど強制的に近いログアウトをしたようだった。
握っていたはずの手は虚空に掴み、目の前でアゲハは掻き消えた。
おそらくリアルで何かあったのだろう。
症状が悪化したのか。それとも、もう……
「くそ」
考えるな。
考えればもう想像が止まらないことを半ば無意識に悟り、ハイドは舌打ちをしながら目を閉じた。何度も何度も考えようとする度に同じ行動を繰り返していた。
それが逃避行動だということは理解している。
それが現実逃避だと知っている。
けれども、考え始めたら終わりなのだ。想像してしまったらもう立ち直れない。
それぐらい彼女のことが、彼女との別れの日々は記憶に焼きついていた。
好きか嫌いかと聞かれたら好きだと言えるぐらいには思っていた。だけどそれが友愛以上だったのかどうかなんて自分にも分からない。
恋愛を語れるほど経験はなく、ただ彼女に抱いていた想いはなんだったのか自分でも分からない。ただ言えるのは、大切だったということだけ。
ただ大切な人だったということだけ。
「……俺はどうしたいんだろうな」
そう呟いて、ハイドは無造作に片手を振った。
コントローラーを介さずに、思考にのみでコントロールパネルを呼び出し、その中に納められている一つのアイテムを取り出す。
降り注ぐ春の如き陽射しの中で、ハイドの手の中に冷たい白い風が集い集まっていく。
風を纏い、白い輝くような閃光と共に現われたのは目が覚めるような純白の大鎌。
「スノーフレーク……」
自らの身体を刃と化し、白き大鎌となった少女の名を呼びながら、ハイドはその柄を抱き寄せた。
「俺の行動は……正しかったのかな」
二度に渡り、迷いし自分を導いてくれた少女の幻想を思い浮かべながら、ハイドは呟いた。
「お前なら『間違ってないでっ』 って言ってくれるかな」
風変わりだった少女の口調を思い出しながら、ハイドは苦笑する。
握ったスノーフレークの握り手はひんやりと冷たく、熱に浮かされた思考を冷ましてくれるようだった。
――不意に音がした。
「え?」
ピコーンという聞き覚えのない音が聞こえた。
音に反応して見上げると、そこにはクルクルと一枚の封筒らしきオブジェクトが浮かび上がっていた。
「メールの受信……――メール?!」
不意にあることに気付いて、ハイドが慌ててスクリーンパネルを展開する。
パネルの仮想キーボードを叩いて、表示画面をメールの確認画面に移行する。
そして、その画面にあったのは――発信者:スワロウテイルの新着メール。
「アゲハ?!」
驚きながらも、パネルを操作して開封。
中身を確認する。
【ハイド殿へ
突然のメールに驚いているだろうが、これはスワロウテイルのプレイヤーではなく、主治医である私が書いている。憶えているかね。あの時、彼女のPCを代理で使用していた者だ】
「あの……医者から?」
予想してなかった内容に目を丸くしながらも、ハイドはさらにメールの下を見
る。
【そして、君がもっとも気にしているであろう事実を伝えよう。
スワロウテイルのプレイヤー――『あげは』は死んだ】
「なっ」
【いや、正確には死んでいないのだがほぼ死んだのと同一であるといってもいい。
呼吸筋はほぼ麻痺寸前まで進行し、唯一残っていた眼球運動までままならなくなっている。今の彼女は生命維持をされているだけで、話すことも見ることも出来ない状態だ。
ここまで進行すればいずれ死亡に到達するのは時間の問題だ。
そして、彼女が死亡すればこのゲームのアカウントは彼女の両親が解約するだろうから、今私が君に伝える最初で最後のチャンスだということになる】
「……死」
やはりという気持ちとふざけるなという気持ちがハイドの中で入り混じる。
【そして、君に伝えてくれと頼まれていた言葉を伝えたいと思う】
「言葉?」
『彼女は幸せだったと言っていた。
君に出会い、そして君を通じて知り合った全ての人たちに出会えて本当に幸せだと言っていた。
診察をする私の目からみても、彼女がTHE WORLDに触れ合っている数ヶ月は幸せそうに見えた。
彼女は今までの人生を、本来送るべき青春を、白い病院の中で過ごさなければならなかった。
最初こそ何人もの面会人が居たが、数年前から一人として現われなくなった。
そう彼女の両親でさえ、彼女を居ないものだと扱っていたのだよ。
彼女は生きる気力を失いかけていた。
動くことも出来ずに、話し相手もいずに、ただ動かずに読める朗読ソフトの本や映画などで現実逃避するしか出来なかった。
そんな彼女にTHE WORLDを薦めたのは私だ。
何かの癒しになれば、気晴らしになればいい。
その程度の考えだったのだが、彼女は本当に嬉しそうに過ごしていたよ。
もはや喋ることすらも面倒だと振舞っていた彼女が、診察に来る私に楽しそうに思い出を語るほどだった。
そして、彼女にその思い出を得させたのは間違いなく君だ。
だからあえて私は医者の領分を越えてこう言いたかったのだよ。
ありがとうと。
そして、彼女の最後の言葉がこれだ。
『私はあなたにあって救われました。我侭かもしれませんが、私のことを忘れないでください。ありがとう、ハイド』
』
そうして。
その言葉でメールは終わりを告げていた。
「……」
メールを読み終えたハイドはただ沈黙し……
いや、嗚咽を堪えて、拳を握り締めた。
「忘れろって……いう……ほうが無茶だろうが……」
吐き気を堪えるように口に手を当てる。
漏れ出る泣き声を、噛み殺す。
悲しむなと、彼女に願われたから。
ハイドは泣くことを堪えた。
そして。
彼は思う。
「忘れない……」
この世界に。
このゲームの中の世界の外側に。
「……これはゲームじゃないんだ」
彼の手の届かないところに確固としてリアルは存在し。
その中で生きている人が居ることを。
彼は……知った。
それが彼と彼女の物語の結末。
届かない位置に羽ばたいていった揚羽蝶を見送った、紫陽花の物語。
悲しく。
切なく。
そして、幸せだった物語の終わりである。
あとがき。
どうも初めまして。
このHPに投稿させていただいた箱庭廻と名乗っているものです。
本来のハイドランジアとはかなり色が異なる話でした、大変恐縮でしたが、このような話もありえるんじゃないかと考えて書きました。
時間軸としては無印完結から黄昏の腕輪伝説編までの間の話です。
孤高たるハイドランジア。
それは本当に孤独なのか? そう考えて作り上げたのがスワロウテイルという少女でした。
本当の孤独を知るが故に繋がりを求める少女は、ハイドランジアに何を残したのでしょうか。
これはありえたかもしれないIFです。
故に朱雀さんの作品にはまったくないかもしれない話です。
まだまだ精進が足りない内容でしたが、それらを掲載する機会を与えてくださった朱雀さんに感謝を。
読んでいただけた皆様に感謝をしてもしきれません。
ありがとうございました。
でもハイドに涙は似合わない……うぇぇぇぇぇん!!!
霊体で「久しぶりハイド!!」とか来ら笑えるけど怖いな……
何となくギャグ化で想像してみた。
スワロウテイルがログインしました。
「ハイド!! 久しぶり!!」
「(;゚Д゚)! な、なんで!?」
「実は……あのハイドとハイドランジアのこと初めて知ったとき、ハイド×ハイドランジアを想像して……」
「BL!?」
「絵……描いちゃったの」
「止めろぉぉぉおおおお!!! ってか何が関係あるんだよ!!」
「それで「BL!!」 って叫んで飛び起きたら……画面に頭突っ込んで死んじゃった。
その時にこの世界に魂だけ飛び込んじゃったのかな?」
「生き返って死ぬ前の言葉がBL!?」
2ndを作ろう
「へー、ハイドはそれ(錬装)だからメールアドレスを渡さないきっかけになったんだ」
「デバッカーに消去されるっての!!」
「で、ハイドはハイドランジアって言いかけたら生まれたんだね」
「まぁな」
「じゃあさ、私も新しく2nd作りたい!!」
「は?」
「だってアゲハは現実ではもう魂も存在しないんだよ? だったらね?」
「そうだな」
「がんばるね?」
2ndのアゲハと言う名前になり、容姿も変わる……だが……
「なんで装備が無しなんだよ!!」
俺は突っ込んだ。
突っ込んだ?
「きゃぁぁぁああああーーーー!!」
近くの湖に深く落ちた。
俺らは寒い思いをして出てくる。
「あの時のハイドの気持ち……よくわかった。 寒いね……」
「だろ……?」
ご飯
「この世界じゃ楽しみが無いね……」
「俺は食事が一番だけどな」
「え!?」
「あ~、俺は一応食うと味がわかるんだよ……って俺の飯のストックを全部持っていくなぁぁぁああああ!!!」
結婚
「おー、カイト!!」
「ハイド、とアゲハちゃん
アゲハちゃん!?」
「来ちゃいました、てへ」
「いやいや、来ちゃいましたって、ぇぇ!?」
「死んじゃったらこの世界に来ちゃったの」
流石にあの死にかたは無いよな……。
「お、アルビレオ!!」
「どうしたハイド?」
「実はさ、カクカクしかじかあって……」
アゲハがこの世界に来てしまった事を話す。
「なるほどな、そうなると将来お前の嫁だな」
「なんでそうなるんだよ!!」
「だがこの世界にお前とアゲハ以外に魂が取り込まれた奴はいるか? ましてや食事すら味が感じられるんだぞ? それに将来家族が……」
「ぐ……」
「まぁ俺に任せろ? ちゃんと結婚式用の服とかは……」
俺は初めてPKをしたくなった、流石にやらなかったけど。