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無印終了後ハイドとカイトの決着!
そこは現在、緊張の糸が張り詰めていた。
その原因は同型の、しかし色違いの二人の少年PCにある。
紅の少年は三叉の双剣を手にし、蒼の少年は白い大鎌を手に対峙していた。
二人の周りには、その勝負を見守るために集まったギャラリーが大勢いる。
誰一人として声を発さない、否、発せない。
どのくらいそうしているのだろう。
不意に、誰かが一枚のコインを投げる。
それは正確な軌道を描いて、二人の間に落ちる。
キンッ
小さな・・・しかし充分すぎるくらいの戦闘の合図。
それと同時に二人は激突した。
時を少し巻き戻そう。
なぜこんなことになったのかというと、『黄昏事件』の祝勝祝いの席でカイトがハイドに唐突に言ったからだ。
「ハイド、僕と勝負してよ。」
「へ?」
ハイドは気分よく踊っているときに言われて、間の抜けた声しか出なかった。
「だから、僕と勝負してよ。」
カイトはもう一度言った。
それはもう、晴れやかな笑顔で。
「なぜに?」
ハイドは頭の上に?マークを浮かべて、カイトに問い返した。
「だってハイドランジアに何度も稽古つけてもらったけど、真剣勝負はまだ一回もやったことないから♪」
「(軽やかに♪つけんな!)・・・いいけど・・・それはお互いの全力で?」
「うん!僕もハイドもレベルはカンストしてるから、そうじゃないと決着つかないでしょ?」
ハイドはそれを聞いて、頭を抱えた。
ハイドの本気というのは錬装士の特性をフルに活かした戦い方で、状況に応じて使い分けるものだ。
それに加えて、ハイドはこの『世界』で生きているのだから多少仕様外の行動を起すこともできる。
リアルの人間と同じ行動が。
(カイトも全力でっていうし・・・こいつは手加減したら失礼になるな・・・)
ハイドはそう考えて、カイトの申し出を受けた。
ここで冒頭に戻る。
双剣と大鎌が独特の金属音を奏でながらぶつかり合う。
それはまるで一種の音楽のようにも聞こえる。
ハイドとカイトは互いの攻撃の軌道を完全に読みあい、一度もまともにダメージを食らっていない。
ハイドが自分の身体で動いているに対して、カイトはコントローラでの操作。
(すごいな・・・俺の動きに完全についてきてやがる。)
ハイドは無意識のうちに口が弧を描く。
それは歓喜。
自分と同じ技量の者に出会えたことに対する純粋な喜び。
ハイド自身、戦うことは嫌いではないし、こうやって競り合うのは楽しい。
ただ殺し合いが嫌いなだけなのだ。
それから何合打ち合ったのか解らない。
不意にハイドは後ろに下がった。
「どうしたのハイド?」
カイトが無表情のままそう聞く。
否、顔のモーションを動かすだけの余裕がないのだ。
その証拠に瞳だけはこの戦いを楽しんでいるような輝きに満ちている。
「別に、ただ大鎌だけじゃ不利だと思って、な!」
ハイドはそう言うと同時に片手に剣を持つ。
それは本来なら両手に装備するはずの双剣。
それを片手で持ち、もう片方の手で大鎌を持つ。
それにカイトは驚愕するが、すぐに双剣を構えて迎え撃つ。
ガキンッ
双剣で剣を受け止めたカイト。
カイトはそのまま踏ん張ろうとしたが、すぐに後ろに跳んだ。
すぐ目の前に大鎌の切っ先が横切る。
あのまま踏ん張っていたら、カイトは確実に切り裂かれていた。
「へー・・・よく避けたな、カイト。」
ハイドはカイトの動きに特に驚くことなくそう言った。
恐らく、先ほどの攻撃はカイトが避けることを前提に繰り出されたのであろう。
「結構ギリギリだよ。それにしても一度に二つの武器を使うなんて・・・それがハイドの本気?」
カイトは顔のモーションを動かさず、しかし目に強い輝きを宿したまま聞いた。
「そんなとこ。俺は今のところ二つの武器を状況に応じて使い分けることが出来る。それに忘れたのか、カイト?」
「なにを?」
「俺にとって・・・この『世界』が現実だということを!」
ハイドはそう言うと同時に、剣をまるで投げナイフのように投げる。
カイトはそれを避け、ハイドに攻撃を仕掛けようとした矢先、自分の視界が高速に前に流れる。
前を見れば、ハイドが手に何も持っていない状態で立っている。
(もしかして僕・・・ハイドに跳び蹴りされた!?)
そう考えたと同時に、動いていた視界が一瞬のぶれと同時に止まった。
HPがかなり減少して、レッドゾーンに入っている。。
「これは・・・僕の負けだな。」
カイトがそう宣言した。
こうして、ハイドとカイトの師弟(?)対決は呆気ない幕切れとなった。
カイト(以下カ)「それにしてもずるいよ、ハイド。」
ハイド(以下ハ)「何が?」
カ「だって、今までの稽古じゃあんな戦い方しなかったじゃないか。」
ハ「馬鹿だな。切り札は最後までとっておく。それにおまえは俺がここで生きていることを知っているじゃないか。」
カ「それでも、いきなる双剣を投げてくるなんて誰が考えるんだよ。」
ハ「はいはい。何事も常識に囚われない。おまえも今回の『黄昏事件』を通じて思い知ったことだろ?」
カ「それでもリアルの人間を相手しているみたいだったよ。」
ハ「それを言うなら、俺だっておまえを蹴ったときの感触を感じてるよ。斬りに行かなかっただけ、ありがたいと思え。」
カ「・・・もしかして、ハイドがPK嫌いなのもそれが原因?」
ハ「・・・悪かったな・・・」
カ「うん、それに関しては僕もごめん。」