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原作開始の少し前のお話。

次回からはアギの修行のオリジナル展開です!

早いもので俺のお見合いからすでに4年が経過している。
ネギと小太郎は相変わらずのラブラブっぷりで、小太郎がたまにこっちに顔出すと俺はとっとと別の場所に避難している。
さすがにキスとかはまだみたいだけど、ネギが小太郎に寄り掛かって甘えているのを何回か見たことある。
ネギが誰かに甘えるのはいい傾向だから俺はそっとしているけど、詠春さんがそれに出くわすとなんか顔が強張ってさりげなーく邪魔するんだよな。
あれか?婚約は認めたけど娘(この場合息子だけど)を取られたくない親の心境なのか?

フェイトに関してはあんまり変わってないかな。
たまに村に来るけど、その場合は誰にも会わずに俺とだけ話をして俺を口説いて帰る。
口説く合間に手や頬にキスされることもあるけど、唇にされるのは最初の1回だけでそれ以来ないな。
何年もそんな関係が続くから、手や頬に関しては俺もあきらめた。
英国だと手や頬なんて挨拶だ、挨拶!

ナギの杖はネギが所有することになった。
俺が持つよりネギのほうがいいと俺が思ったからだ。
ネギはまだ詠春さんが父親だとは知らない。
俺も知らせていない。
ネギはあれ以来ナギばかり追いかけているけど、原作ほどひどくはない。
ちゃんと立ち止まることも頼ることも知っているネギに、これ以上の情報は混乱させるだけだからな。
だから俺はネギがもう少し成長してから……せめて京都修学旅行までは伏せておきたかった。
たくさんの人間と触れ合って成長してほしかった。
そんな俺はじーさんや宝玉、ネギと一緒に踊り手として修行と魔法使いとしての修業を頑張っている。
他に俺とネギは一族特有の武術を教えられた。
原作当初よりちょっと強くなったみたいだけど、本当に原作突入したら読めないぞ、コレ。

そうやって俺とネギは魔法学校と一族の修業に明け暮れて日々を過ごしています。
それで俺とネギはもうすぐ卒業式です。
ま、スプリングフィールドの肉体のスペックが高かったから俺も同時期に卒業できたんだけどな。
じゃなかったらもう数年ここにいたよ。

 

 

 

 

 

 

 


「ねえアギ。アギの婚約者って誰なの?今まで一度も紹介してくれないよね?」

俺とネギの卒業前の最後の帰郷。
そこで俺とネギは湖の近くの野原でのんびりしていた。
踊りの練習もそこそこで二人で野原に寝転がっていたところ、ネギに前々から聞かれていたことを問われた。
うわー……万が一こいつとフェイトが京都でぶつかったときにどう言えばいいのかわかんねーから、フェイト自身俺にしか会わないことをいいことに今まで黙っていたのに~~!!

「あいつは……まだ暫定婚約者だからな。いつ婚約が切れるか解らないから、確定するまでは紹介する気はねーよ。」

「えー!?それでも将来的には義兄弟になるかもしれないんだから、一度くらい会ってみたいよ。」

「あー……ハイハイ、そのうちな。」

俺は適当にはぐらかして目をつぶる。
ネギがなんか文句言っているけどこの際は無視だ無視。

俺は野原の風を受けながら考える、これからのことを。
もうすぐ卒業する。
そうして始まるネギまの物語。
この世界は原作とは違う並行世界。
それでも今のところの大体の大きな流れは原作と変わらない。
違うのは俺たち一族のことと、魔法世界のあり方。
恐らくネギは原作通りに麻帆良に修行に出されるはずだ。
そして麻帆良の3-A……今はまだ2-Aの生徒たちと一緒に世界の騒乱に巻き込まれる。
少年漫画にありがちな冒険譚が繰り広げられるんだろうけど、俺という……そして一族というイレギュラーがある以上どうなるか解らない。
俺の原作知識なんてほとんど役にたたないかもしれない。
それでも……ネギと小太郎が笑っている結末になってほしいし、俺だって幸せになりたい。
そのために少し足掻いてみるか。

 

 

 

 

 

 

 


「いいかネギ。もし母さんのことを聞かれてもその時は『父さん』って言うんだぞ!一族の秘密を言うなんて言語道断。よほどの事情がない限り絶対に話すな。」

「わ、わかってるよ。」

早いもので卒業式も終わって、ネギは原作通り日本で先生をやることになった。
言葉のほうは小太郎との長い文通で問題ないし、魔力制御も俺が見れるだけ見たからくしゃみで武装解除が発動されることはない。
体さばきだって一族の武術を教え込まれている。
そうそう不覚を取ることはないけど、武術に関しては俺より弱いんだよなぁ、コイツ。
踊りは俺より堪能なくせになんでかそっちの才能は俺が上。
原作では中国拳法のほうをやっていたから、そっちの才能を開花をするのか?あ、でも踊り手が身体に傷を残すようなことって基本的に許されていないから拳法を覚えずに砲台タイプになるのか?

俺はネギにあれこれ注意事項をしながら、ネギと一緒に荷造りをする。
こいつ、下手したらアンティークコレクションを全部持っていこうとするからな。制限掛けないと置き場がないっての。
あ、これも言っておかないといけないな。

「あと、ないとは思うが誰かに告白とかされても気を持たせるような返事だけはするな。先生と生徒がそんな関係になるのも好ましくないし、おまえは将来的に小太郎と結婚するんだから、相手に希望を持たせたら最終的に傷つけるだけだ。」

「うん、それは解ってるよ。昔からさんざん言われているし、アーニャの時だってきっぱり断ったんだよ。」

数年前、こいつアーニャに告白されて大パニックになったんだよな。
アーニャの奴、一族の事情を知っていながらでもネギを好きになったからすげーよな。いや、単に子供だから理解が及んでいないだけか?
そんで相談にのった俺が断れって言っといたんだよ。
アーニャと結ばれるなんて一族が許さないし、MMの元老院も許さない。
踊り手候補であるネギも俺も男以外の相手を選ぶ権利なんてないんだからな。
俺はそのことも踏まえて何度もネギに言い聞かせた。
下手したらアーニャが殺されるし、ネギ自身もアーニャと結婚する気は皆無なのだから気を持たせるのは残酷すぎる。
それでアーニャは振られて数日は引きこもったけど、今は良き友人としてそばにいる。

「それだったら良いけどな。おまえは小太郎と結婚することが決まっているんだから、告白されたら婚約者がいるって言えば大抵の奴は押し黙るさ。」

それ以外は略奪愛上等ってことになるけど、それはさすがにないよな?
原作じゃこいつを巡っていろいろとドタバタ劇が展開されてたけど。

「うん。その時は相手の名前を出すのもいけないんだよね?」

「ああ、俺たちの一族が特殊なだけで世間的には同性婚はまだまだ認められていないところが多い。日本でもそれは同じだから、隠せるなら隠しておけ。」

「うん……世間っていろいろと難しいんだね。」

「そうだ。そんな中でおまえは子供なのに先生にならなきゃいけない。それでおまえに対して侮ったりする奴。先生なのだからと大人の常識を突き付けてくる奴。もしかしたら大戦の恨みで襲ってくる奴もいるかもしれないし、利用してこようと近づいてくる奴もいるかもしれない。」

俺は荷造りの手を止めて、ネギをまっすぐ見る。
ネギもまっすぐ俺を見る。
まったく同じ体躯、同じ容姿の俺の双子の兄弟。
違いはネギはメガネをかけていて、俺はメガネをかけていないくらいしかない。

「ネギ。今まで俺たちは一族のみんなやMM元老院の人たちに守られてきた。けど、これからはその庇護が届きづらい場所におまえは一人で行かないといけない。日本には小太郎や詠春さんがいるけど、いつなんどきも守られるとは限らない。それどころか詠春さんは関西呪術協会の長だから、時として手を差し伸べることすら難しい。」

「……僕たちっていろんな人たちに守られているんだね。」

「ああ。だからそれを考えて行動することを俺たちは求められる。向こうでお世話になる学園長は関東魔法協会の長だけど、こちらの事情は一切知らないって聞くから余計だ。一族のことを知らない人間から見れば俺たちは大戦の英雄の息子っていう肩書しかないからな。いろんなところからちょっかいが掛けられる。」

「う~なんだか外の世界が怖くなってきたよ。アギも外に行かないといけないんでしょう?」

「俺だって怖いよ。ネギとは修行場所も違うから助け合いなんてそうそうできないし。けど、何時までも怖いと言って内に引きこもることを許されないからな。マギステル・マギっていうのは正直俺にはどうでもいいけど、活動する分には便利な肩書ではあるな。」

「うわ。アギってばまたそれ?この年でそういうのを言うのって反感買うよ。」

「いいのいいの!外ではマギステル・マギに憧れている普通の子供を演じているんだからさ。」

実際に体験してみて、なんでオリ主があんなにもまわりにケンカ売る言動するのか理解できん。
世間体って大事だよなぁ。俺には冷たい視線の中で生きるのはできんな。
元日本人なめんな。

「つーわけで、俺たちのまわりは普通の魔法使いよりも何倍も厄介ごとに溢れているから、一般人に魔法がばれて巻き込むことがないように!もしバレたらちゃんと上に報告して仰ぐこと!記憶消去の魔法は難しいんだから自分でやらないように!」

「うっそれでオコジョの刑になったらどうするのさ?いやだよオコジョになって小太郎と婚約解消なんて!」

「安心しろ。おまえはまだ見習いなんだから長くても数年、短くても数か月ですむ。それに大事な踊り手候補を元老院は無下にしないさ。婚約のことも小太郎の性格ならおまえを何年でも待ってそうだしな。」

あいつって案外一途だからなぁ。
俺が何度かネギのフリして近づいても一発で見抜いてくるし……ま、そんくらいの奴じゃないとネギは任せられないからいいか。

「問題は俺の方だよ。もしオコジョ刑になるほどのことをやっちまったら、あいつはなんか待たずに刑務所に襲撃掛けそうでこえーよ……」

あいつも無表情ながら俺のことを大事にしてくれるているからな~
刑務所に入ったら問答無用で拉致されそうでそのまま花嫁ルートまっしぐら!?
義務だと思えばまだ耐えられるが、心情的には無理!
孕んだ途端に流産しそうだよ。

「そうなるほど、アギは愛されているんだね。」

ネギは少し羨ましそうに呟くが、精神がいまだノーマルの俺から言わせてもらうと相手が女の子だったらちょっと嬉しいんだけど……この場合は男が相手だからな。

俺はそんな未来を想像して深くため息をはいた。
俺とネギが魔法学校を卒業した数日後の話である。

 

 

 

 

 

 

 


ちなみに俺とネギの修行場所は全然違う場所になったことをここに明記しておこう。
俺も麻帆良を見てみたかったな。

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