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アギの修行編はじまりはじまり!

「アギや。体には気を付けるのじゃぞ?」

「そうよ。アギはしっかりしているところがあるけど、なんだかある意味ネギより心配なのよね。」

「大丈夫だって!一応、向こうにも知り合いがいるし俺の監督は母さんの戦友だっていうあの人なんでしょ?」

こんにちわ、アギ・スプリングフィールドです。
魔法学校も卒業して卒業後の課題のためにいろいろと準備も終わって、一足早く修行場所に向かったネギに遅れてやっと俺も出発です。

「うむ、そうなのじゃが……ナギがいきなり何人も男を引き連れて帰ってきたときは驚いたのう。」

「そうね。私はまだ小さかったからよく覚えていないけど、あの人たちがナギさんのお婿さんなのかな~って思ったくらいだわ。」

いやいや男のハーレムってどんだけむさくるしいんだよ。
『紅き翼』が美形ぞろいだからまだ見れるけどよ。
父親は詠春さんだけでお腹いっぱいです。

「もしナギの奴が全員を婿にするとでも言おうものなら説教の一つでもするところじゃったが、ナギは良い男を選んだものじゃよ。」

じーさんはそう言って半ば遠い目をしていた。
あ~一夫一妻が基本だもんなぁ俺たちの一族は。
旦那を増やせば一族の数も一定にできるけど、子供を作る条件に『情が通い合う』があるからそう簡単にはいかねーもんな。
ハーレムとか逆ハーとかはお話だから上手くいくことであって、現実でそんなことしようものなら後ろから刺されてもおかしくないんだよな。
……やべー……ネギのこと心配になってきた!
あいつ大丈夫だよな!?原作みたいにみんなに可愛がってもらっているよな!?

「おお!そろそろ時間じゃな。アギ、向こうに行っても元気でな。」

「身体には気をつけてね。」

「ああ!行ってきます!!」

俺はそう言ってフードを被ると魔法世界へとつながるゲートであるストーンヘッジへと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

<???side>

場所は変わってメルディアナ魔法学校の校長室。
そこにはネギとアギの卒業証書の写しが残されていた。
ネギの卒業課題は『日本で先生をすること』と書かれており、アギの卒業課題にはこう書かれていた。

 『魔法世界で踊り子として見聞を広めること』

そしてまた場所が変わってアギとネギが過ごした家屋には二人が置いていった本物の卒業証書がおかれている。
ネギの卒業証書は写しのものと変わらない課題が書かれており、アギの証書も変わらない課題が書かれていた。いや、そのはずであった。
アギの課題の文言だけ歪み、消え、そして新たな文章がその下から現れた。

 『日本で先生をやること』

その文言が現れた証書に手を伸ばす一人の男がいた。
本来ならこの家屋には誰もいないはずなのにその男はとくにコソコソするわけでもなく堂々とした態度で卒業証書を手に取るとそれを一瞬で燃やし尽くしてしまった。
後には灰すら残ってはいなかった。

「これで証拠隠滅~♪しっかし、ネギも魔法世界送りにするつもりだったんだが精霊ってのは思っていたのより厄介だったな。あのアギって奴の卒業証書しか改竄できなかったぜ。」

男はもう用が済んだと踵を返す。

「ま!これで少なくともあのイレギュラーの排除はできたな。あとは魔法世界の連中がどうにかしてくれんだろ♪」

そう言って笑う男の顔は醜く醜悪に歪んだ笑顔を浮かべた。

 

 

 

 

 

 


<アギside>

魔法世界へとゲートを通った俺はそこに広がる光景に唖然とした。
漫画でこの世界のことはある程度知っているつもりだったのに、それは所詮それは『つもり』でしかないことを俺は痛感した。

見たことのない様式の高い建造物にその間を飛び回るクジラのような形の巨大な乗り物がいくつもある。
不思議な光景……それが俺の第一印象だった。
俺はしばらくその景色に見惚れていると、後ろから声を掛けられた。

「君がアギ君かい?」

俺は後ろを振り返るとそこにいたのはピシっとしたスーツに身を包んだ青年が二人の護衛を伴って歩いてきた。
友好的なニコニコと笑っているが、どこか作ったような笑顔。うん、いけすかないな。
俺はその態度を表に出さずにっこり笑い返す。

「はい、アギ・スプリングフィールドです。MM元老院のクルト・ゲーデルさんでよろしいでしょうか?」

クルト・ゲーデル。
かつて『紅き翼』に所属していた天才剣士。
そして今はMM元老院の政治家。
今回の修行で俺がお世話になる人だ。
いくらなんでも修行だからって子供一人を魔法世界に放りだすなんて異常すぎるからな。
昔はこういう修行内容でも一人で旅に出していたらしいが、修行の途中で死んだり、誘拐されたり、闇に堕ちたりすることが多数あり、人材がなかなか育たなかったけど今はこうして監督役がつけられて見習いが間違った道に進まないようになっている。
ネギの場合は学園長だし、アーニャの場合は下宿先の人間がそれに当たる。
といっても、さすがにこの人が四六時中見るわけじゃあないよな。
この人政治家だし、俺についてきて一緒に旅するわけにはいかないし。
恐らくクルトさんの部下とか知り合いの信頼のおける人が護衛についてくると思うけど……

「それじゃ一度君の実力を見せてもらおうかな?こちらに来てくれ。」

俺が考えふけっているとクルトさんがそう言ってきて、俺は慌ててその後を追っていった。
はて?俺の実力?踊り子としてのことかな?

 

 

 

 

 

 

 


「あのー……これってどういう状況ですか?」

俺はあの後なぜかMM重装騎士団の演習場で騎士団員の一人と対峙していた。
いや、本当にどうなっているんだ。

「君はこれからこの魔法世界を旅するのだから戦う力がないといけないだろ?君とネギくんはあの偉大なる英雄『千の呪文の男』ナギ・スプリングフィールドを継ぐ大切な人間なのだからね。」

クルトはそう言って笑う。
うん、なんとなく言いたいことは解るよ?
先の大戦の『武』の英雄の息子なんだから強くなれって言いたいんだろうけどな、俺の本質はあくまでも『踊り子』なんだよ。

「え、でも俺は『踊り子として魔法世界を旅する』のが課題のはずです。俺自身には自衛以上の戦闘力がないので元老院から護衛を数名お借りできると聞きましたけど……」

身体に傷をつけるなんて踊り手にとっちゃ愚の骨頂。
これだけは一族のみんなから叩き込まれてきたんだ。
ナギみたいな例外中の例外を除いて、一族のみんなは誰一人として無暗な戦闘を好まず、補助や回復といったものを中心に学び、踊り手じゃなくとも一族の踊りを学ぶ。
そんな踊り子は身体を魅せるのが仕事みたいなもんなんだからな。

「踊り子?おかしいですね、こちらには魔法世界で見識を広めるために剣闘士として修行すると書類にありましたが……」

うそ!?ありえねえよ、確かに卒業証書には『踊り子』だって書いてあったんだぞ!?
俺は急いで置いてある荷物に駆け寄ると念のために持ってきていた卒業証書の写しを確認するが、そこには確かに『踊り子』の文字があった。

「あの!これ俺の卒業証書の写しです!!」

俺はそれをクルトに差し出すとクルトはそれを見て顔色を変えた。
通常、魔法学校の卒業課題を決めるのは運命の精霊と呼ばれるもので、不正操作を行おうものなら精霊からどんな災いが起こるか解ったものじゃない。
だから卒業証書の改竄なんてものはできないはずだからこんな風に情報が間違って伝わるなんて……

「……まずい……非常にまずい……」

「へ?」

あれ?クルトさんがなんか青い顔して脂汗もだらだら流しているけど……あ、いやな予感。

「アギくん。実はひじょーに!言いづらいのですが……今回の君の修行に関しまして、とある人に君の監督役をお願いしたのです。」

「とある……人ですか?」

「ええ、とても腕がたち、さまざまな二つ名で呼ばれるほどの者で、君を強く育てられて、ナギ・スプリングフィールドについても詳しく思っている人間をと思いまして……」

そこで演習場の入口の方から歓声が聞こえてきた。
それはどんどん大きく……というよりこっちに向かっている!?

「誰……呼んだのですか?」

「生きたバグと名高いジャック・ラカンです。」

どっかーーーーーーーん!!

演習場の一角から轟音と土煙が舞い上がった。
その土煙の中から浅黒い肌に金色の髪をバンダナで上げ、俺の何倍もありそうな大きな巨漢の男が現れた。

「ようクルト!そいつがナギの息子か?」

ずいぶんと男臭い笑みと声でジャック・ラカンは俺の前に現れた。

よりによってこの人(最強のバグキャラ)を俺の師匠につけやがったのかよ!?

 

 

 

 

 

 

 


<???side>

演習場から遠く離れたとあるビルの屋上。
そこでは一人の男が目の前に映るモニターからの情報に苛立ちを覚えた。
男はモニターを睨み付けながら

「ちっおい緊急事態だ。よりによってこの時点でジャック・ラカンが出張りやがった。」

『なに?それでアギ・スプリングフィールドはどうなった!?』

「わからんが、ジャック・ラカンに連れて行かれたみたいだ。ちきしょうゲーデルの奴、自分の子飼いの部下をつけると思っていたんだが……それでどうする?」

『残念だがアギ・スプリングフィールドの監視は当分中止だ。こちらでもジャック・ラカンを追っていたがどうしても振り切られてしまう。そちらはクルト・ゲーデルの動きに注意してくれ。』

「了解。それにしてもネギの双子の兄弟ってぜってー転生者だろうな。ネギのおこぼれにあずかろうって魂胆なんだろうなぁ?」

『否定できんな。それでわざわざ運命の精霊を操作してこちらによこしたんだ。ネギが魔法世界に来る前に始末をつけるぞ。』

「おう、そっちも頼むぜ。」

男は通信を切るといまだモニターに映るアギ・スプリングフィールドを睨み付けた。

「アギ・スプリングフィールド。残念だが原作の女たちはみーんな俺たちのものだからよ、この世界で死んでくれよ。」

笑う男の顔は端正な顔立ちなはずなのに、厭らしく嘲笑うそれでかなり醜悪なものに見えた。

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