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『黄昏事件』が終わってから、長い時間が過ぎた。
あの時、事件解決に貢献したメンバーは、『ドットハッカーズ』と呼ばれ、伝説のパーティとして名を馳せている。
俺はそのウワサを耳にしつつも、今日も今日とて孤高でタウンをうろつき、闇の紫陽花でプレイヤーに助言し、傍観し、敵対している。
さて、今日は一体なにをしたもんかな?
.hack//hydrangea
『新しい伝説の幕開け』
「うっへー・・・本当に枯れてるな。」
「えぇ、最近こんなトラブルばかり続いているんです。」
俺は今ハイド姿で、CC社の新人デバッカー剣士の護衛として依頼されてとあるエリアに来ている。
俺はCC社からは、削除できない関与できない厄介な放浪AIと認識されているみたいで、削除できなければどうにかして利用しよう!という方針になったらしく、こういった仕事を頼まれる。
新人のPCはレベルが足りないとかで、弱いのが多いからな。
報酬は、アルビレオ経由で上手い料理データ。
どうやらCC社のトップレベルのプログラマーが作っているみたいで、味も匂いも上出来!!
あれを一度味わうと、やみつきになるな。
「そんじゃ、とっとと直そうぜ。俺はモンスターや他のプレイヤーが来ないように見張っておくからな。」
「はい、お願いします。」
そいつはそう言うと、直そうとなにかパネル操作している。
俺はすぐに直るだろうと思って、あたりを見ていたら、突然新人の悲鳴が聞こえた。
俺は振り返ると、そこには見たことのないモンスターと倒れている新人がいた。
くそ!あそこには魔方陣も放浪モンスターもいなかったはずだぞ!?
俺はモンスターを切り裂くと、新人に話しかけた。
「おい、大丈夫か?」
『大丈夫です。ちょっと驚いただけで・・・僕はこのままログアウトしてこのことを上層部に伝えます。」
「わかった。今回の依頼料はいらねぇから、次回はしっかり護衛するよ。」
『はい。』
そいつはそう言って、ログアウトした。
俺は念のため、CC社のほうにメールでさっきのことを報告しといた。
なんか・・・嫌な予感がする。
あれから暫くして、アルビレオから俺が護衛した新人が意識不明になったことを知らされた。
あいつだけじゃなく、他にも何人ものプレイヤーやCC社の人間がそうやって意識不明になっているらしい。
おいおい・・・まさかあれから4年経ってるのか?
だとしたら・・・今は『黄金の腕輪伝説』時代じゃねぇかよ!?
ちきしょう・・・この中って時間わからないからなぁ・・・
しかも俺が原作やアニメを見てから、随分時間が経っているから記憶もおぼろげだ。
キャラは覚えていても、ストーリーなんか頭に残っていない。
やばい・・・ここに来て俺の先読みが出来ないのはちょっと痛手だ。
俺はそう考えながらマク・アヌの町並みをぶらぶら歩いていたら、誰かとぶつかった。
「のわっ」
「いてっ」
俺とぶつかってきた奴は、見事にその場にすっころんでしまった。
俺はぶつけた箇所を手で押さえつつそいつを見る。
そいつは俺の知り合いのPCだった。
「いってー・・・悪いカイト。大丈夫だったか?」
あれ?カイトの奴、今は進路決めでしばらく来れないって言ってたと思ってたんだが・・・息抜きに来たのか?
俺がそう言ってカイト?に手を貸すと、珍しく間抜けな顔を晒していた。
「カイト?・・・俺はシューゴって言うだけど・・・」
「シューゴ?」
俺がカイトと勘違いした奴、もしや腕伝の主人公さんですか?
もう物語りは始まってるんですか?
うそーーーーーー!!!?
俺は今日始めてログインしたと話すシューゴに、いろいろとこの世界の遊び方を教えてやった。
この世界にクリアなんてないから、プレイヤーの数だけ遊び方が存在する。
「へー、ハイドっていろいろ知ってるんだな。」
「まぁな。俺はフラグメント時代から『ここ』にいるから、その辺の奴より詳しい自信はあるぜ。」
俺はニカっと笑ってそう言う。
シューゴはキラキラした目で俺を見てくる。
子供らしくていいねぇー・・・最近のガキは礼儀を知らないからな・・・
いけね・・・ちょっと最近指導したガキのことを思い出しちまった。
「お兄ちゃん!」
そこに女の子の声が聞こえてきた。
俺とシューゴがそっちを向くと、ブラックローズがいた。
いや・・・ブラックローズじゃなくて、キャラプレで当選した子か。
「おまえ・・・怜奈か!?俺の双子の妹の!?」
「あったりー!『レナ』でーす!」
「へ?なに?おまえら双子で当選したのかよ?」
俺は事情を知っておきながら、そ知らぬ振りしてそう言った。
「あれ?そっちの人ってもしかして『孤高』?」
お!レナは俺のこと知ってるみたいだな。
俺はレナのほうにきちんと向き直ると、うやうやしく頭を下げた。
「初めましてレナさん。俺は双剣士のハイド、二つ名は『孤高』と申します。」
俺の名前を聞いた途端、レナは手を叩いて喜んだ。
「うわー!まさか『レナ』で二つ名持ちに会えるなんて思わなかったよ。私、重剣士レナです。よろしければご指導お願いします!」
そう言って、レナは頭を下げた。
「なぁ?レナはハイドのこと知ってるのか?」
あ、シューゴのこと半ば忘れていた。
「当たり前よ!!双剣士『孤高』のハイドと言えば、The World一と言われても過言じゃない古参プレイヤーなんだよ!?『闇の紫陽花』に匹敵するほどのプレイヤーで、『ドットハッカーズ』より下手したら有名なんだから!!!」
うぇ!?俺がドットハッカーズより有名!?
なんかの間違いじゃないのか?
ハイドとハイドランジアはただの古参プレイヤーだっつの。
「レナちゃん・・・なんで俺が天下の『ドットハッカーズ』より有名なんだ?」
俺の問いかけに、レナは目をキラキラさせてこっちを見る。
ブラックローズがお姉さん属性なら、レナは妹属性だな・・・
同じPCで、ここまで違う印象を受けるとは思わなかったな。
「だってこのゲームのB版からプレイしていて、誰にも負けたことのない最強のプレイヤー!それを驕ることなく、初心者やそういう人たちのサポートをしているんですもの。あなたにお世話になった人たちや、PKしようとして返り討ちにあった人たちの間で有名です。」
うわー・・・なんか背びれ尾ひれがついている気がする。
確かに、一般プレイヤー相手に負けたことないけど、クビアに負けてるんだけどな。
つーか・・・『レナ』は今日始めてログインしたんだよな?
だけど、ここまで俺のことを知っているとしたらこいつは・・・
「レナちゃん、それってセカンドPCなのか?」
「はい!」
俺の問いかけに、レナちゃんはしっかり頷いてくれた。
その横で、シューゴは初心者だって言ってるけど、レナが初心者じゃなけりゃ『ハイド』がサポートする必要ねーな。
俺がそのことを言うと、レナは残念そうに声を上げた。
シューゴはなんかほっとしているように見えたが、俺の気のせいか?
「そんな~、折角ハイドさんに会えたのに~!」
はは・・・そんな声出されても、俺はメンバーアドレスを渡したりしないぞ?
「レナ~・・・はやく冒険に行こうぜ!」
シューゴの奴が俺を睨みながら、そう促している。
おい・・・俺は君のシスコンメーターに引っ掛かったのか!?
俺はレナにまとわりつく『虫』と認識されてるのか!?
「それじゃ、俺はもう行くよ。」
俺はとっとと離れたほうが賢明だと判断して、2人から離れた。
といっても、カオスゲートで転送しただけなんだけどな。
場所は『萌え立つ 過ぎ越しの 碧野』だけどな。
俺は今、真っ黒いローブを纏って白い大鎌を持って平原を歩いている。
ぶっちゃけ、ハイドランジア姿でシューゴたちを待ち伏せしよう!とい目論見なのだ。
無印時代じゃ大して活躍できなかったからな。
今回は主人公たちと絶対!冒険するんだ!!
俺は握り拳を作って決意していると、むこうの方でシューゴたちが転送されているのに気づいた。
そして、その少し離れている場所には、見覚えのある呪文使いのミストラル・・・じゃなかったこの時代ならミレイユだ。・・・の姿もある。
俺は気づかれないように3人を尾行する。
今のところ気づかれてはいないみたいだ。
にしても・・・シューゴ、もうちょっと操作を頑張ろうな?
いくらなんでも、このエリアの雑魚にそんなボコボコにされるのは見ていて哀れだぞ?
俺は飛び出したいのを我慢して、尾行を続ける。
ハイドランジアでは、助言が主になりそうだよ・・・
しばらく尾行を続けて、飛び出すタイミングを計っていたら、シューゴたちの目の前にとんでもないモンスターが姿を現した。
モンスターの名前は『鎧超将軍』。
こんな初心者エリアに出てくるようなレベルじゃねぇって!!
俺はスノーフレークを構えるとシューゴたちの目の前に出た。
といっても、タイミングが悪かったみたいで、既にシューゴが『おばけ』になってるけど(汗)
「このようなところに不相応な異形が現れたな。」
俺はそう言いながら、レナをお姫様抱っこして鎧超将軍の攻撃を避けた。
俺はレナにフードの下の顔が見えないように、レナの顔を見た。
「大丈夫か?」
俺がそう聞くと、レナは顔を赤くして俺を見る。
おいおい・・・なんだよその反応は?
「は・・・はい・・・」
おーい?目がハートになってるぞ?
・・・って、そんな場合じゃなかった。
俺は鎧超将軍の攻撃を避けながら、レナを降ろすタイミングを窺うが、こいつ普通よりすばやく設定されているみたいだから、その隙がねー!!
ちっきしょー!ここに誰かいれば・・・
俺がそう考えていると、突然目の前の鎧超将軍の身体が切り裂かれた。
そして、目の前に降り立つ白銀の騎士。
「おまえがこの程度に苦戦するとは・・・らしくないぞ『闇の紫陽花』」
「仕方がなかろう?黒き薔薇の後継者をおざなりにするわけにはいかないのだからな。『蒼天』」
俺たちは、互いに二つ名で呼び合う。
しっかし、本当にグッドタイミングだバルムンク。
俺はレナを降ろすと、バルムンクが離れるように指示した。
レナはバルムンクにも顔を赤くして、その指示に従う。
レナちゃんって・・・ミーハーなのか?
まぁいいか。これで思う存分戦える。
俺は改めて武器を構えて、バルムンクの横に立つ。
「いっやー・・・本当に助かったよバルちゃん。」
「そのあだ名はやめろ。それと、その姿でハイド口調はやめてくれ。」
バルムンクは俺の口調にうんざりしたような顔でそう言った。
「ひっどーい!俺とバルちゃんの仲じゃんかー!!」
「どういう仲だ!!」
俺とバルムンクが漫才染みたことをやっている間に、鎧超将軍は回復していた。
バグモンスターか・・・
「さて・・・汝はあと何回殺せば死ぬのかな?」
俺はハイドランジアモードでそう言った。
「この世界に倒せないモンスターはいない。倒せないモンスターはただのバグだ。」
戦闘開始。
ズバッ
「へ?」
「な!?」
俺たちが一歩踏み出そうとした途端、鎧超将軍がまた倒れた。
言っておくが、俺たちじゃないぞ?
「あっれー?バルムンクとハイドランジアじゃん!ひっさしぶりー!!」
こ・・・この口調は・・・
俺の隣でバルムンクも、この口調と声に心当たりがあるみたいでちょっと嫌そうな顔をしている。
そんで、モンスターの背後から現れたのは俺たちの想像通りの奴だった。
「ばびょん!やっほー楚良くんでーす!」
やっぱりかーーー!!?
「楚良・・・おまえがこんな初心者エリアに何の用なんだ?」
「んー?司くんやミミルと待ち合わせー♪まだ時間あったから、暇つぶしに適当にワード選んだんだよ。しっかし・・・まさかこんなエリアで鎧超将軍なんて、管理者の人の怠慢じゃん!」
あ・・・バルムンクの口が引きつってる・・・
バルムンクはCC社に就職して、今はリョースの後釜でシステム管理者やってるからなー・・・楚良のこの言葉はきついって。
あ?なんでこの時間軸で楚良がいるのかって?
そりゃー俺も思った。
原作じゃ、楚良は意識不明から回復したあと、The Worldの記憶は全部失っていたはずなんだけど、ここじゃ記憶はばっちり持ってる。
しかも、放浪AI化してたときの記憶もあるみたいでバルムンクやカイト・・・他のドットハッカーズの存在もばっちり知ってるわけなんだ。
んで・・・なんの冗談なんだか、いつの間にか楚良も二つ名持ちになってる。
二つ名は『死の恐怖』。
楚良はPKだけど、特に弱いもの虐めをするタイプじゃない。
クリムやバルムンク、カイトのような強いものと戦いたがる傾向がある。
そして、その長年の操作技術とかで勝ち星付けまくっているがゆえに付けられたのが、この二つ名。
はっきり言ってシャレになってない。
「汝が我らを助けるとは・・・明日は全てのエリアが嵐となるな。」
「あ!そういうこと言うわけ?せっかく助太刀に入ったのに。」
おまえが俺らに戦いを挑むんじゃなくて、助けに入ったからだろうが。
それに・・・鎧超将軍とっくに回復してるぞ?
俺たちはそれに当然気づいているわけで、攻撃をあっさりかわす。
「うーん・・・やっぱあのウワサは本当なのかにゃ?」
「ウワサとは?」
楚良の言葉に俺が問いかけると、楚良はおもしろそうに口を歪めた。
「『黄昏』が再び来る・・・ってね♪」
「なんだと!?」
バルムンクが驚きを顕にしている。
その間も、モンスターからの攻撃は避け続けている。
そこに、鎧超将軍の動きが変った。
今までがむしゃらに俺らを狙っていたのに、不意に別の場所に走り出した。
その先にいるのは・・・レナ!?
「やばい・・・レナ、逃げろ!!」
「レナー!」
俺が声を荒げると同時に、シューゴがレナの傍に走り寄っている。
その腕には黄金の腕輪・・・カイトの腕輪か!!
「シューゴ!その腕輪を使え!!」
俺の言葉にシューゴはあたふたしながらも、腕輪を鎧超将軍に向ける。
そして放たれるスキル。
「データ・・・ドレイン!!」
腕輪から伸びた光が鎧超将軍を包み、データを書き換えていく。
そして光が収まると、鎧超将軍は超雑魚モンスターのぐにゃりんに変っていた。
ぐにゃりんは、そのまま逃げていく。
俺はそれにほっとしつつ、シューゴたちに歩み寄る。
シューゴは俺に警戒して、双剣を構えてレナの前に出る。
いや・・・俺、敵じゃないんだけどな・・・
「誰だ、あんた?」
「我が名はハイドランジア。二つ名は『闇の紫陽花』。この『世界』で唯一の大鎌使いだ。」
「・・・で?あんたいった「ハイドランジアさまーー!!」・・・ごふっ!!」
うおっ!?レナちゃんがシューゴを吹っ飛ばして、前へ出てきた。
俺は後ずさりしそうな自分を叱咤して、なんとか踏みとどまる。
シューゴの奴、無事か?
「さっきは危ないところをありがとうございます!私は重剣士のレナと言います。あの・・・よろしければメンバーアドレスを・・・」
いや・・・あの・・・目をうるうるさせながらにじり寄らないでくれ!!
シューゴの目が怖いんだよ!!
「すまないが・・・我は誰ともメンバーアドレスを交換しない。汝らが無事ならそれでいい。」
俺はそこで踵を返す。
これ以上ここにいたら、心臓に悪い!!
「汝らに夕暮竜の加護があらんことを」
俺はそれだけ言って、バルムンクたちのところに向かった。
「くはー・・・まいったぜ・・・」
「モテモテだな、ハイド。」
ここは水の都マク・アヌ。
俺とバルムンクは、裏路地のところにいる。
楚良は、待ち合わせの時間だからってここにいない。
姿はハイドモード。
カイトの色違いPCということで、結構珍しい目で見られるんだよな。
主に『黄昏事件』後にやっている奴ら。
「それにしても・・・キャラクタープレゼントキャンペーンなんて、CC社はやってはいないはずだぞ?」
バルムンクがさきほど見たシューゴとレナのPCを思い出して、そう言った。
「楚良が言ってたろ?再び『黄昏』が迫っているって・・・恐らくアウラが蘇らせたんだ。勇者と腕輪を。」
「そうか・・・ならば、あの二人を全力でバックアップしなくてはな。そちらは頼めるか?」
バルムンクの言葉に、俺はにやりと笑う。
「了解!報酬はバルちゃんお手製の料理データで手を打とう!」
「くっ・・・わかった、最高のデータを食わせてやる。」
バルムンクの酒のデータは美味いんだよな♪
「それじゃ新しい勇者候補さんを見守りますか!」
新しい伝説が開幕した。