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くるくるくるくる歯車回る。
回る回る物語
一体なにが回ってる?
『世界』を壊す歯車が
無垢な子供の手により嵌る
これから始まる崩壊の歯車が・・・
.hack//hydrangea
『壊れた歯車』
花見騒動からしばらく。
俺は二日酔いのためホームから出られなかったけど、管理者権限を使ったバルムンクやアルビレオが見舞いに来てくれて、一応シューゴたちの近況は把握している。
なにやらいろいろと騒動を巻き起こしながらも、楽しくやってるみたいだ。
それに仲間もそれなりに増えてるみたいで安心したな。
ただ・・・まだ腕輪の危険性についてははっきり認識できてねーみたいだ。
あんだけ危ない目にあっておきながら、危険性を認識できないのは問題だな。
俺から一度はっきり言っておいたほうがいいかな?
俺はホームに設置してあるベッドから起き上がる。
なんとか二日酔いも治ったし、しばらくぶりに出るか。
俺はアイテムの確認などをして、ホームから出た。
まずは、シューゴたちを探すかな?
俺はぶらぶらとタウンを歩き回る。
俺が引きこもる前とあんまり変らない。
知っているPCもいれば、初めて見るPCもいる。
俺はそのなかで、目的のPCを探す。
けど、なかなか見つからないな。
しばらく俺はタウン内を捜索する。
別に今日中に探さなきゃならないってわけじゃないけど、早めに教えなきゃならない。
「強すぎる力は『破壊』にも『救い』にもなる・・・か。」
まさにあの腕輪は言葉通りの代物だ。
平和な『世界』には必要のない代物だけど、『世界』に黄昏が迫っているならこれほど必要とする諸刃の剣はない。
まだなにも知らない勇者候補たちに、そのことを教えないと無邪気に世界が壊される。
俺はカオス・ゲートの前に来ると、別のタウンに飛ぶ。
考えたら、考えるだけ焦りの心が湧き出てくる。
『世界』を壊されたら、俺は『居場所』を失ってしまうから。
「み・・・見つからない・・・」
あれからどのくらい経ったのか、俺はとうとうシューゴたちを見つけることが出来なかった。
かわりに見つけたのは・・・
「だいじょーぶ、明日には見つかるよ♪」
『死の恐怖』の二つ名を持つ双剣士を見つけちゃいました。
「んなこと言ったって、楚良だってあの腕輪の危険性は知ってるだろ?」
俺たちは適当なエリアに来て、シューゴたちを探すが全部空振り。
メンバーアドレスを交換すれば、メールで呼び出しだのなんだのが出来るんだが・・・諸事情によりそれは出来ない。
結構不便だな・・・
「あー・・・バルムンクや三十朗辺りが接触して話していればいいんだけどな~・・・」
「無理じゃないの?あういう熱血タイプって、自分で思い込んだら一直線!って感じじゃん。」
俺が頭を抱えていたら、楚良がなにやら実感篭った声で言う。
「やけに説得力あるのは気のせいか?」
「クリムみたいな大人の熱血タイプならともかく、子供の熱血タイプはそういうもんでしょ。」
「あーなるほど。」
それは説得力あるな。
幸いにしてシューゴは子供の熱血タイプだけど、最近のひねくれたガキじゃなくって、素直さがあるから間違いには早めに気づきやすい。
ひねくれたガキで思い出した・・・シューゴたちに会う前に指導したあいつら本当に生意気だったな。
明らかに人を小馬鹿にしやがって・・・しかもそれがロールじゃなく、素だから余計に性質が悪い!
ああ、思い出したらムカムカしてきたな。
俺は苛立ち紛れに近くの魔方陣に歩み寄る。
こういうときは、モンスターで憂さを晴らすのが一番だ!
後ろで楚良の声が聞こえるけど、今は無視だ!
そうして、俺は一番近くの魔方陣に近づくと中からモンスターが出てきた。
ここはそんなにレベルの高いエリアじゃないけど、俺の八つ当たりに協力してもらうぜ!
俺は双剣を構えて、そのモンスターと戦おうとして、違和感に気づいた。
目の前のモンスターは一見、超鎧将軍に見えるけど腕が違う。
武器が違う。ところどころの装飾も違う。・・・こいつ、改造モンスター!?
俺はそのモンスターの異様さに驚いている間に、そいつの武器が振り下ろされる。
やばい!やられる!?
「くっいろんなモンスターを組み合わせてる・・・運が悪いな~」
俺が咄嗟に防御の体制をとっていると、俺とモンスターの間に楚良が割って入って、そいつの攻撃を受け止めた。
「楚良!?」
「こいつ、例の改造モンスターだよね?腕輪もないし、どうするの?」
「そんなの・・・ぶっ潰すに決まってるだろ!!」
俺は楚良が受け止めている武器を、双剣で弾くとモンスターと距離を取った。
そしてスノーフーレクを構えて、ハイドランジアの黒いローブを纏って、俺はモンスターを睨みつける。
「我の機嫌が悪いときに現われたのが運の尽き・・・この『世界』の平穏を崩す異形よ、我が刃の前に眠るがいい!」
俺は地を蹴って、モンスターの足を切り裂く。
それによりバランスを崩したモンスターは倒れた。
「ヒュー!さっすが『闇の紫陽花』!つえー」
「気を抜くな。これが改造モンスターならば、すぐに再生される。」
楚良が茶化して言うが、俺はモンスターから目を離さない。
あいつをぶっ潰すって言ったが、勝算なんて無いに等しい。
データドレインしようにも、そういったスキルも道具もない。
ここに運よくシューゴたちが現われるなんて都合のいいことなんてあるはずないんだ。
俺は奥歯をかみ締めて、徐々に再生されいていくモンスターを睨みつける。
こいつになにかしら決定打を与えないことには、こちらに勝算はない!
それからしばらく、俺&楚良VS改造モンスターの攻防が続いた。
どれくらいそうしたのか、こいつは一向に倒れない。
やっぱり、データドレインは必需品か!?
こいつを倒した後にでも、ヘルバかアルビレオにつけてもらおうかな~?
俺は意識が遠くに飛びそうになりながらも、必死に動き続ける。
楚良のほうも精神的に疲弊してきてるみたいで、動きが落ちていってる。
だー!どうすりゃいいんだ!?
俺はバックステップでモンスターの攻撃を避けるが、その際に足をくじいてしまった。
「っ!しまった。」
俺は痛む足を押さえながら、紙一重で攻撃を避けるがそう長くも続きそうにない。
楚良も楚良で、俺を助ける余裕なんてないのは見ていてわかる。
俺の目前にモンスターの攻撃が迫ってくる。
「・・・ここまでか・・・」
俺は観念して目を瞑って攻撃に備える。
しかし瞼の下からでもわかるほどの強烈な光が、俺の目に届いた。
俺がおそるおそる目を開けると、そこにいたのはデータドレインの光に包まれているモンスター。
「もしかして・・・シューゴ!?」
俺はデータドレインを使ったシューゴがいると思って、あたりをきょろきょろ見渡すが見つからない。
かわりに、もっとも意外なものを見つけた。
それはまるで石の人形。
例の赤い杖は持っていないが、間違いなくあいつの腕から伸びている光はデータドレインの光り。
嘘だろ?だってあいつはカイトが、倒したはずだ。
「なんでこんなとこにいるんだよ、スケィス!」
俺たちを助けたのは、間違いなく死の恐怖・スケィスだった。
あのあと、スケィスはモンスターをデータドレインしたあと、どこかに消え去っていった。
なにも喋らず、なにも示さず。
「なんでスケィスが俺たちを助けてくれたんだ?」
俺はフードを脱いで、スケィスが消え去った方向を呆然と見つめた。
「・・・よかった。」
そのとき、楚良がそう呟いたのが俺の耳に届いた。
「楚良?」
「あいつ・・・ちゃんと本来の役目に戻れたんだ・・・」
そう呟く楚良の顔は自分のことのように嬉しそうに笑っていた。
「って待て、なにがなにやら説明してくれ。」
自分の中だけで納得するな。
俺が説明を求めると、楚良はめんどくさそうに話してくれた。
纏めるとこんな感じだ。
●楚良はスケィスの杖に閉じ込められていた間、ずっとスケィスの声が聞こえていた。
●スケィスを含む八相は、もともと正常な頃のモルガナに造られたアウラや『世界』を護る防御システム。
●モルガナの暴走により、八相たちも歪められて本来の役割からはずれてしまった。
●楚良が杖に閉じ込められていた間、スケィスのそういった苦しみの声が聞こえていた。
●だから本来の役目に戻れたスケィスを見れて嬉しい。
・・・こんな感じか。
そりゃまぁ、確かに母としては子供を護るなにかを残そうとするのは、自然なことだ。
その護る術で子供を殺そうとするなんて、なんとも皮肉なものだ。
まさか八相にそんな秘密があるなんて思いもしなかったしな。
それにしても、あいつが来てくれなかったら俺たちは改造モンスターにやられていたんだよな。
「本当に人生ってどこでどうなるかわかったもんじゃないな。」
俺の呟きは誰に聞かれることなく空気に消えていった。
そのとき、俺たちは気づかなかった。
隅の方で、俺たちのことをじっと見ている人影に・・・
とりあえず一言。
『昨日の敵は今日の友』