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前サイトの元1000HITです。

ハイドランジアがPCに対して敵対しているお話。

全世界で2000万人に達する大規模オンラインゲーム。

『The World』

この中ではさまざまなプレイヤーが、自分で決めた役割を演じる。

主人公なんていない。

いるとすれば、それは自分自身が主人公なのだ。

そんな『世界』でも、やはり有名人というものは存在する。

『フィアナの末裔』、『ドットハッカーズ』、『蒼炎のカイト』、『孤高のハイド』・・・

グループや個人で与えられる二つ名。

その中で、この『世界』で最も古い二つ名をもつPCが存在する。

通常ではありえないエディットで、仕様外の大鎌をもつPC。

その名はハイドランジア。

二つ名は『闇の紫陽花』

この『世界』全てのプレイヤーの

助言者であり

傍観者であり

そして・・・


 

敵対者

 

 

 

 

 

「・・・って、マジでそんなウワサがあるのかよ?」

あるダンジョンで、一人の剣士が一人の呪文使いから、そんなウワサを聞いた。

「ああそうさ。彼はいつも月夜の荒野に現われる。」

クリーム色のはねた髪型をした少年タイプの呪文使い。

「彼のPC名であるハイドランジアは紫陽花の英名。だから彼はこう呼ばれる。『闇の紫陽花』」

呪文使いの話を聞いて、剣士は口元を歪めた。

「おもしれー・・・そんな奴を倒せば俺の名前も一気に広がるってわけだ!」

大柄な剣士は自らを奮い立たせるように、踵を返す。

そしてそのまま、立ち去っていった。

あとに残された呪文使いは、とくに剣士を追いかけるわけでもなく、呼び止めることなく見送る。

「君に勝てるかな?この世界が出来たときから存在する『彼』に。」

呪文使い・・・Rumorはおもしろそうに笑った。

 

 

 

 

 


「は!?俺に挑戦だー!?」

その数時間後、Rumorはたまたまネットスラムで住人と雑談していたハイドを見つけ、先ほどの剣士との会話を伝えた。

「おいおい・・・そいつ俺がカンストしてるって知ってるのか?それにPKは嫌だぞ?」

ハイドはいかにも面倒くさいといった表情を浮かべるが、Rumorはくすくすと面白そうに笑う。

「カンストしてるのは知らないっぽいけど、すでにあっちはやる気満々だよ。」

これは当分追いかけられるよ~っと笑うRumorにハイドは殺意を覚えたが、今は目の前の呪文使いより、まだ顔も知らない剣士のことを考える。

「うへー・・・女の子に追いかけられるのならいいけど、男なんてやだー・・・」

「そう思うなら、さっさと決着つけちゃえば?」

「げー・・・」

ハイドは嫌そうな顔をするが、相手がどこまで追いかけてくるのか解らない。

下手したら自分が相手に怯えて隠れているとBBSに書き込まれる可能性も出てくる。

自分のロールを汚される前になんとしても葬らねば!

既にハイドには、選択の余地がなかった。

 

 

 

 

 

「むー・・・本当にこんなところに現われるのか?」

件の剣士が月夜の荒野のフィールドを歩いていた。

レベルはそんなに高くないので、モンスターが襲ってきても簡単に返り討ちに出来る。

剣士はそうやって、『闇の紫陽花』を探しながら魔方陣をオープンしていく。

しばらくして、フィールドの全ての魔方陣をオープンしたところで、剣士はため息を吐いた。

「ここははずれか。仕方ない、また別にフィールドに行くか。」

剣士はそう呟いて踵を返そうとしたところ、小高い丘の上に人影が見えた。

剣士はその人影に気づき、急いでそちらを向くと、そこにいたのは月を背に、真っ黒いローブに身を包み、真っ白い大鎌を持ったPCが立っていた。

「おまえが・・・『闇の紫陽花』・・・」

剣士は無意識にそう呟く。

「是。我はそう呼ばれている。」

確かな肯定。

剣士は心の中で歓喜した。

目当ての獲物に、こんなにも速く会えた事を。

「お前と勝負がしたい!」

剣士は武器を構えて、そう言った。

ハイドランジアは特になにも言わず、丘から飛び降りると、剣士の目の前に降り立った。

まるで重力がないかのように。

「よかろう。汝が我と敵対するのであれば、我とて容赦はしない。」

それは常の『彼』を知っている者から見れば驚愕の一言だろう。

ハイドランジアはPKを嫌う。

そんな彼が、相手をキルしかねない勝負を買ったのだ。

「ルールは?」

ハイドランジアが厳かに剣士に問う。

「ルールは何でもありの一本勝負!どちらかがキルされるまで行う!!」

剣士の目には、既にハイドランジアしか映っていない。

「・・・・・・解った。」

ハイドランジアはそれに承諾すると、大鎌を構える。

剣士も武器を構える。

そして・・・剣と大鎌がぶつかった。

 

 

 

 

 

勝負はものの数分で終わった。

結論を言うと、ハイドランジアが勝った。

剣士は『おばけ』にされて、まだログアウトせずにその場に転がっている。

ハイドランジアも剣士を回復させようかと迷う。

なにせ先ほどから剣士は負け犬の遠吠えのごとく、先ほどから罵詈雑言をぶつけまくっているからだ。

負けてなお、これほどの敵意をぶつけられているのだ。

回復させたらどういう行動をするのか解らない。

「・・・おい、聞いてるのかこのチーターが!いいか、俺が負けたのはお前が強いからじゃなねぇ!!お前がチートなんぞやってるからだ!!!このレベル70の俺が負けるはずがねぇんだ!!!!」

(こいつ・・・頭悪いんじゃねぇのか?)

ハイドランジアは剣士の言葉に内心呆れる。

レベルが30近く離れているのだ。

これではよっぽど上手く戦略を組まなくては勝てるわけがない。

「・・・汝は我のレベルを知っているのか?」

「あ?んなのしらねーよ!」

「我はとうの昔にカンストしている。」

「え?」

「我と汝の間には30近くも差がある。これでは汝が我に勝てなんだ理由が解ったか?」

「ド・・・どちくしょーーーーー!!!!」

剣士は負けた明確な理由を突きつけられて、最後に捨て台詞にもならない言葉を吐きながら、ログアウトした。

きっとリアルでは泣いているだろう。

ハイドランジアは剣士が完全に消えたことを確認すると、フードを脱いだ。

「ぷはっ久しぶりに闇の紫陽花モードになると、厳しいな。」

「それでもお見事だよ。」

ハイドランジアの背後からRumorの声が聞こえて、ハイドランジアはジト目でRumorを見る。

「・・・ったく、おまえが余計な情報を流すから、こんなことになったんだぞ?」

「僕だけのせいじゃないさ。今じゃ君の名前を知らないという奴のほうが、少ないぐらいだからね。」

Rumorはハイドランジアのジト目をものともせず、けらけらと笑う。

「俺・・・もうPK嫌だ・・・」

「人を切る感触があるから?」

「・・・あぁ。モンスターみたいに、無機物を壊す感触じゃない。明らかに肉を切る感触なんだ。」

「だから君は敵対者を名乗っていても、めったなことではPKしない。」

「リアルに影響ないのはわかってるけど、それでも・・・俺がやだ・・・」

ハイドランジアは悲しそうに言うが、Rumorの次の一言にその雰囲気がぶち壊された。

「でも、まだ挑戦者が出てくるよ!」

「へ!?」

「君を倒して名を上げたいってPCは大勢いるんだ。それが沈静化するまで、頑張ってね!」

Rumorは面白そうにそういい残して、ゲート・アウトしていった。

あとに残されたハイドランジアは、ぷるぷると身体を震わせるとくわっと天を仰いだ。

「Rumor!!!!!」

 

 

 


これからしばらくハイドランジアの前に挑戦者が現われたが、その全てを返り討ちにした。(PKはしてない)

それにより、ハイドランジアの名前はますます広まり、影ではこう呼ばれるようにもなった。

『世界の敵対者』
 

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