[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ハイドが初心者PCをPKから守るお話です。
私は一人でダンジョンの奥を進む。
「えっと・・・こっちでいいのかな?」
私は今日、初めてこのゲーム・The Worldを始めた。
友人達に誘われて始めたけど、右も左もわからないことだらけ。
本当なら、今日は友人達と一緒にやるはずだったのに、みんな用事とかで結局、私一人でダンジョンに潜ることになった。
一応、マニュアルは一通り読んだから、操作は解る。
私の操るPCは呪文使い。
ソロだと難しいって聞いたけど、私とパーティ組んでくれる人見つからなかった。
だから、こうやって初心者エリアを一人で探索することになった。
レベルを上げて、みんなを驚かせよう!
そう思って、私はダンジョンの奥を進むけど、やっぱり一人だときついな・・・
「ねぇ君。ソロなの?」
「え?」
「よかったら、俺たちと一緒に行かないか?」
そろそろ戻ろうかと思った矢先、私は2人組みの剣士に声を掛けられた。
よかった!こんなダンジョンで一緒にパーティ組んでくれる人に出会えるなんて、すごいラッキー!
私は二つ返事で、その二人と一緒に奥に進む。
「えっと・・・これってどういう状況なの?」
あれからしばらくモンスターを倒したり、宝箱を開けたりしながら進んで、ようやくアイテム神像までたどり着いた。
それでアイテムを手に入れて帰ろうとしたところ、ここまで一緒に来てくれた二人の剣が私に向けられている。
なんでなんでなんでなんでなんでなんで?
ここまで一緒に冒険してくれたのに、一緒にパーティ組んだのに・・・
「馬鹿な奴だ。こんなにすんなり俺たちを信用するなんて・・・」
剣士の一人が、馬鹿にしたように笑いながらそう言った。
「本当にな。ちょっとは警戒するかと思ったけど、こんなにすんなり行くとちょっと拍子抜けするな。」
もう一人の剣士が応えるようにそう言った。
私・・・ここでPKされちゃうの?
私が一歩後ずさると、二人も一歩前に進む。
まるで小動物を追い詰めるみたいに、じわりじわりと私を追い込んでいく。
どうしよう・・・出口は二人の後ろ。
精霊のオカリナもないから、脱出できない。
最初の冒険がこんな最悪の終わり方なんて・・・嫌だよ。
多分、今の私は泣いているんだろうな。
だって・・・視界が揺れて見える。
私は観念したかのように目を閉じる。
『私』が殺されるのを見たくない!
「お!もう終わりか?だったら・・・え?なんだ、おまえ・・・うわぁ!!」
「ひっお、おまえは・・・ぎゃああ!」
・・・・・・?
二人の悲鳴が聞こえて、私はおそるおそる目を開けてみる。
私の視界に飛び込んできたのは、二人の剣士じゃなくて青い少年タイプの双剣士がそこにいた。
「大丈夫か?」
その双剣士は心配そうに私の顔を覗き込む。
私は驚きで声を出すことが出来ずに、ただコクンと首を縦に動かすモーションをする。
「ん、そっか。」
双剣士は私の反応にニッカと笑う。
「ね・・・ねぇ、あの剣士たちは?」
私は気になったことを聞くと、双剣士は横の壁のほうを指差す。
私がそちらをみると、二人とも重なり合って倒れてる。
だけどちゃんと色がついてるから、『おばけ』じゃない。
でも、HPゲージがレッドゾーンに入ってる。
「君がPKされそうだったから、とっさにやったけど、余計なお世話だったか?」
双剣士がばつの悪そうな顔でそう言うから、私は慌てて首を横に振った。
「ううん!むしろ助かったわ!!」
「そっか・・・それならいいさ。」
双剣士は笑いながら、その場を去ろうとして私は慌てた。
助けてもらったのに、名前も知らないなんてのは嫌!
「ねぇ、名前は?」
「名前?俺はハイドってんだ。そこそこ知られてるから、暇があったら調べてみな。」
そう言い残して、双剣士・・・ハイドは本当にその場からいなくなった。
私は二人が回復する前にお宝を回収すると、さっさとダンジョンから出た。
ハイド・・・まえ会えるかな?
あれからハイドの言うとおり色々調べたら、彼がすごく有名なヘビープレイヤーだって解った。
友達にもそのことを話したら、驚かれて、羨ましがられた。
ハイドと友達になれないかなって、友達に言ってみたら、すごい変な顔された。
友達曰く、ハイドと友達にはなれるけど、メンバーアドレスまでは手に入らない。
彼は誰かとメンバーアドレスの交換しない。
メンバーアドレスを渡さず、受け取らず。
これがハイドのプレイスタイル。
だからこそ、彼の二つ名は『孤高』。
『孤高』のハイド。