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知り得た真実の一端
それをどう受け入れるかはその人次第
覚醒したばかりの力は一体どうなるかは未だ未知数
だけど・・・悪い方向に転がることはないだろう
それはあなたを護る為の力だから
ゼロの使い魔~ちょっと変った平行世界~
(ルーク視点)
ギーシュとの決闘から3日。
俺のベッドの上でサイトが安らかな寝息をたてている。
身体の至る所には痛々しい包帯が巻かれている。
水の使い手や秘薬を使って大分傷は癒えているが、サイトはまだ目を覚まさない。
俺はベッドの隣に椅子を持ってきて、サイトの包帯を換えたり、汗を拭いたりしている。
流石にわき腹の包帯を換えるときは目を逸らしながらやっている。
他の奴に任せる気にはならなかった。
もしかしたらサイトも俺と同じようになんらかの理由で性別を隠している可能性があるからな。
だから俺はサイトの怪我を他の奴には必要最低限しか見せていない。
俺はサイトの顔をじっと見る。
今までファースト・キスを男相手にする羽目になったと憤っていて、サイトの顔をじっくり見たことがなかった。
けれど、こうやって見ればサイトもやっぱり女の子なんだと思い知らされる。
サラサラな髪に、結構細い肩。
まつげも案外長くて、唇も瑞々しくルージュもつけていないのに綺麗なピンク。
手当てしている時に触れた肌は、きめ細かくて柔らかかった。
それに、ギーシュとの決闘のときに鳥を操った時のサイトは本当に神秘的で、一瞬、森を守護する精霊に見えた。
ちょっと見、男にしか見えないけどこうやって見れば、かなり綺麗なんだな。
・・・身長は俺より高いけど。
俺は自分の胸がざわつくのを感じた。
こんな感情を俺は知らない。
この感情に名前をつけることが出来ない。
否、多分つけることが出来るかもしれないが、それを認めるのが怖い。
「まったく・・・俺らしくないな。」
「惚れたか、相棒?」
突然デルフリンガーにそう言われて、俺は反射的に納得しそうになったが、断言できない。
俺自身、誰かにそういった感情を抱いたことのないから。
だから、俺はこれしか言えなかった。
「解らない・・・」
俺の中で芽生えた小さな芽は、まだどういうものか解らないから。
とにかく今は、サイトの目が開くのを心待ちしている。
(サイト視点)
私が目を開けると、そこにはシエスタがいた。
「あ!目が覚めたんですね!!」
シエスタは桶のようなものを持っていて、私のことを心配そうに覗き込んでる。
あれ?私・・・なにやってたんだろ?
「あ!そうだ決闘!!・・・いでぇ!」
私は倒れる前になにをやっていたのか思い出して、急いで起き上がる。・・・けど、直後身体中に走る痛みに、ベッドに逆戻りしてしまった。
「無理しないでください!水の秘薬で怪我を治しているとはいえ、まだ完治しているわけじゃないんです。」
シエスタはそう言いながら、私の両肩を抑え込む。
「水の秘薬?」
「はい。ミス・ヴァリエールが特別にお取り寄せした高価な薬です。」
そう言って説明してくれるシエスタは、机に突っ伏したままで寝ているルイズに顔を向けた。
ルイズはぐっすり眠っているみたいで、そのまわりには包帯や薬ビンみたいなものが無造作に置いてある。
ルイズ・・・ずっと私の怪我の看病をしていたのかしら?
熟睡しているルイズに、私は思わず微笑むとシエスタが目をキラキラさせながら、まくし立ててきた。
「それにしてもサイトさんってすごいです!あんなたくさんの鳥を操って貴族に勝つなんて。」
鳥?・・・あ、そういえば私、森の鳥達の力を借りたんだっけ・・・
みんな、力を貸してくれるっていうから・・・って!なんで私、鳥の言葉がわかったのよ!!
私はただの(?)女の子で・・・ここの人たちみたいにメイジでも、なんでもない普通の人間。
その私がなんで動物の言葉が解ったのかな?
「サイトさんって勇気があるんですね。」
不意にシエスタがなんだか熱い視線で、私のことを見ているのは気のせいかな?
顔も赤いし、風邪だったら早めに休んだほうがいいよ?
「勇気って・・・別に間違ったことを間違えてるって言っただけだよ。」
私はそう言って、自分の右手を見る。
そこに刻まれているのは、私がルイズの使い魔になった証であるルーン。
よく小説とかでも、こういったものには不思議な力があるって言うからねぇ。
私が動物の言葉が解るようになったのは、これのおかげかな?
私はシエスタの熱い視線から逃れるために、思考の中に没頭する。
なんだかルイズが起きて、シエスタと揉めているみたいだけど気にしない、気にしない・・・気にしないもん!
(ルーク視点)
サイトがやっと目覚めてくれた。
なんかメイドに迫られていたから、なんとかメイドを追い出して二人っきりになる。
「あー・・・その・・・今まで悪かったわね。女の子だって知らずに、あんな意地悪ばっかりして。」
俺はなんとかサイトの目を見ながら、そう言う。
見たいと思っていたサイトの目は、夜みたいに真っ黒な色をしていた。
俺はその瞳を本当に綺麗だと思った。
現金なものだな。
一度女の子だと意識しちまうと、こんなに見方が変っちまうなんてな。
「いいよ。黙っていたこっちも悪かったし。」
そう言って、サイトはにっこりと笑って、俺を許してくれた。
その笑顔に俺の心臓はまた跳ね上がった。
だー!なんなんだよ、これー!!
「あ、あんたも女の子なんだし、体に傷なんか残すんじゃないのよ!傷が治ったら、あんたの服とか日用品揃えてあげるからね!!」
俺は内心の動揺を押し隠すように叫んだ。
「・・・ありがとう、ルイズ。」
「・・・今は体を治すことだけ考えなさい。」
俺はサイトに水の秘薬を飲ませる。
サイトも俺の手に逆らわず、素直に飲んだ。
「それでも・・・言って、おきたかった・・・から・・・」
サイトがそう言って、寝た。
眠くなるタイプの秘薬を飲ませたから、これでまたしばらくは起きないはずだ。
俺は完全にサイトが寝入ったのを確認すると、壁を背にその場にずるずると座り込んだ。
心臓がまだバクバクいってやがる。
隣の部屋のキュルケにでもなく、幼馴染にでもあるアンリエッタ姫でもなく、黒髪で胸の大きいかわいいメイドでもなく、いきなり現れた男みたいな女の子にこんなにドキドキするなんて・・・
「本当に・・・重症だな・・・」
俺はそう呟いて、目を閉じた。
一度意識してしまった。
今まで芽生えたことのない感情に、どう折り合いをつければいいのか、自分でも解らなかった。
(サイト視点)
決闘の傷も治って一週間。
私は今日もルイズの身の回りの世話をしている。
私が女だってバレてからは、ルイズの態度がずいぶん柔らかくなった。
寝る場所は床からルイズの隣で(最初はルイズはソファで寝るなんて言い出したのよ!?)、食事も私があれじゃ栄養偏りそうだからって、ルイズの分と自分の分を作らせて貰っているの。
ルイズは私の料理を美味しいと褒めてくれるけど、内心はどうだかわからないのよね。
その他変ったことといえば、あの決闘以来、厨房責任者のマルトーっていう人に気に入られたのよね。
なぜか『我らの笛』と呼ばれるようになったのよ。
これは私がたくさんの鳥たちに協力してもらったことが由来みたいなの。
その中でも仲良くなったのはシエスタっていう黒髪のメイドさん。
よく一緒にお料理の話とか、私はルイズの洗濯物を任せてもらえないけど、ほかの人の洗濯を洗う手伝いなんかもしているんだ。
デザートのお菓子作りもレシピを教えてもらったり、私がレシピを教えたりしていて、なかなか充実した生活を送っている。
シエスタが私と顔を合わせるたびに赤くなるのはちょっと気になるけどね。
ただ、最近なんだか変な視線を感じたりするのがちょっと気になる。
視線を感じたほうに目を向けると、なぜかフレイムがいるんだよね。
話を聞いてみても、『主の命令です。』としか話してくれなくて・・・私って嫌われてるのかな?
そう聞いてみたところ、なんだかすごい勢いで首を横に振ってたな。
嫌われなくてよかったって反面、本当になんで見ているのか不思議なんだよね。
そんなこんなで、今日はシエスタの手伝いでルイズの部屋に帰るのがちょっと遅れていると、目の前にフレイムが目の前で道を塞いでいた。
「あれ?フレイム、どうかしたの?」
私はフレイムに声を掛けると、フレイムはいかにも言いにくそうに身じろぎする。
しかもなんだか目がきょろきょろと泳いでいて、怪しいんだけど(汗)
『すみません・・・主があなたを呼んでこい・・・と・・・』
「主?それってキュルケっていう人のことだよな?確かルイズと仲が良いのか、悪いのか微妙な・・・」
なんでキュルケが私のことなんて?
『来て・・・もらえるか?』
フレイムの申し出を私は承諾する。
せっかく呼んでもらえたんだし、ここは受けたほうがよさそうだしね。
フレイムに連れられて、キュルケの部屋に訪れた私。
部屋は全体的に暗く、明かりは蝋燭だけ。
な・・・なんだか本当にルイズと同じ構造の部屋なの!?
私は戸惑いながらもきょろきょろと見渡すと、部屋の主であるキュルケはなんだか妖艶なベビードールを着ていた。
私は思わずそれに見入ってしまった。
いいなぁ。私じゃあういうの着ても似合わないのよねぇ。
「そんなところに突っ立ってないで、こちらにいらっしゃいな。」
私はそう言われて、おずおずとキュルケの近くに行く。
椅子が用意されていて、それに座るように言われて私は言われるがままに腰を掛ける。
「あの・・・一体なんの用なんだ?」
「あなたはあたしをはしたない女だと思うでしょうね。」
キュルケがなんの脈絡もなくそう言った。
はしたない?確かにその格好は年頃の女の子がやるには恥ずかしい。
でも私はそれを言ったものかどうか考えていると、キュルケはなんだか腰をくねらせながら私に近づいてくる。
「?どうかしたの?」
「あたしの二つ名は『微熱』。松明のように燃え上がりやすいの。」
うん。それは前に聞いたわ。
だから何が言いたいの?
「あたし、恋をしたの!あの決闘のとき、あなたが鳥を操っているときに!!」
私はそれを聞いてピンときた。
キュルケは私に恋の相談がしたいんだ。
あれ?でもそれなら、よく知らない私なんかよりルイズのほうが~って、二人は表面上仲が悪いから相談しづらいんだ!
それならちょっと納得。
私って女の子同士の恋バナって初めてなんだよね!
「へぇ、誰に?」
私はちょっとわくわくしながら聞いてみる。
「あたしが恋をしているのはあな「キュルケ!」・・・?」
「なんだ?」
キュルケが相手のことを話そうとしたところ、窓のほうから男の人の声が聞こえてきた。
ここって確か3階よね?
私が窓のほうを見ると、ハンサムな感じの男性がいた。
しかもなんだか怒っている感じ。
・・・というかこの感じって・・・
「ちかーん!!」
私は思わず普段隠し持っている棍の一部を相手に向けて、思いっきり力の限り投げつけてしまった。
「ぐほっ!?」
その男はそんな声と一緒に下に落下した。
その少し後に、なんだか鈍い音がしたような気がしたけど、気のせいよね?
「なんだったんだ、今の?」
「ただのお友達よ。それより、あたしが恋してるのは!」
私もキュルケもなんだか冷や汗をかいているけど、それは無視してキュルケの恋バナ恋バナ。
「キュルケ!今夜は僕と過ごすんじゃなかったのか?」
さぁ、次こそは!と聞く気満々のところ、またもやお邪魔!!
でも、この人のほうが先約なら、そっちを優先しなきゃ。
「キュルケ。先約があるなら、そっちを優先しろよ。」
俺が咎めるように言うと、キュルケが杖を一振りした。
その途端、蝋燭の炎がまるで生き物のように動いて、新たに現れた男性に激突。
そしてまた下に落ちていった。
私はそれを見送って、席を立った。
2度あることは3度ある。
もしかしたら、またお邪魔が入るかもしれないし、女の子同士の恋バナはまた今度にしましょう。
私はそう結論付けて、部屋から出て行った。
乱入者を始末したキュルケは、今度こそ!という意気込みでサイトのほうを振り返るが、そこには誰もいなかった。
「あ、あれ?ダーリン!?」
哀れ、キュルケ!
一方サイト。
「ただいま。」
「おかえり。ずいぶん遅かったわね。」
「うん。厨房の手伝いに時間がかかっちまったし、キュルケに恋の相談されたんだ。」
「ああ、キュルケは惚れっぽいことで有名だからね。あんまり真面目に受け取らないほうがいいわよ。」
「そうなんだ。ルイズはデルフの手入れ。」
「そ。こいつってば、ちゃんと手入れしてやんないと拗ねるのよ。」
『自分の相棒の手入れは剣士としては当たり前だろ!?』
「それでも、あんたはちょっと文句多すぎ。」
「あはははは。」
概ね平和のようである。