ゼロの使い魔~ちょっと変った平行世界~
(ルーク視点)
場所は変って俺の部屋。
世間には女として認識されている俺は、女子寮にその身をおいている。
あの後気絶した使い魔を他の生徒に手伝ってもらって運び込んだ。
それで目を覚ました使い魔を、俺は忌々しそうに睨んだ。
一応、こいつには俺が召喚した理由、場所の名前、立場といったものは教えた。
「なんで・・・なんで私の使い魔が人間(しかも男)なのよ!!」
せめて、せめて!女の子だったらー!!
そうだったら俺の心の傷は浅かった・・・!!
「そんなこと言われても・・・俺、もう家に帰れないのか?」
使い魔・・・サイトだっけか?項垂れたように言う。
しかも聞き取りづらいが、「俺のファースト・キスが・・・」とかなんとか呟いてる。
落ち込みたいのはこっちだ!!
・・・決めた・・・俺のファースト・キス喪失の恨みのため、しばらく苛める!
(サイト視点)
「それで?使い魔ってなにをすればいいんだ?」
何故かルイズと名乗る美少女の使い魔になってしまった私。
とりあえず、こっちの世界で生活しなきゃならないし、
「そうね、いくつかあるけど、、まずは主人の目となり耳となるんだけど・・・ダメね、なんにも見えないもの。」
それって・・・プライバシーの侵害じゃないの?
「他は、秘薬を探したりするんだけど・・・あんた秘薬って知ってる?」
ルイズに聞かれて、私は首を横に振った。
勉強すればなんとかならなくもないと思うけど、今すぐは無理ね。
それにルイズはまた大きくため息を吐いた。
「最後に、使い魔は主人を守るものだけど、あんた・・・戦うことできるの?」
そう聞かれて、私は迷った。
戦うって言われても、喧嘩程度しか出来ないし、棒術も使えるけどここでどこまで通用するのか・・・
私が答えに迷っていると、ルイズはまた大きなため息を吐いた。
「それも期待してないわよ。あんた、私より弱そうだもの。」
「うぐっ明らかに俺より華奢なおまえに言われたくねーよ!」
そう言った途端、部屋の温度が10度くらい下がった気がした。
私はルイズを見上げると、これが般若なのかな?って思っちゃった・・・
「その言葉・・・よーく覚えとけよ?お・・・私があんたより華奢でも強いってことを証明してあげる!」
そう言ったルイズは・・・本当に怖かったです・・・
それから、私の仕事はルイズの身の回りの世話に決まった。
家事は得意だからいいけどね。
私の身の振り方(?)が決まってルイズはすぐに寝ちゃった。
私はわらを敷いた床に寝ろって・・・
「ったく・・・こんなに可愛いのに、性格キツイ奴。」
私はそう呟きながら、ルイズの寝顔を見る。
その顔は本当に可愛い・・・
私より身長が低いし、小柄で華奢な体つき。
声も女の子特有な高い声で、男みたいな低い声の私とは大違い。
胸はないけど、それでも容姿は美少女の名に相応しい。
・・・私に無いものいっぱい持っているルイズ。
この子の使い魔をなれば・・・私も身に付けられるかな?
私の密かな想いは、次の日思いっきり砕かれた。
(ルーク視点)
俺の朝は早い。
剣の鍛錬のために基本的に夜明けより少し早く起きる。
横を見ると、わらの上に昨日召喚した使い魔が寝ていた。
のんきな寝顔。
俺はその寝顔を少し見たら、手早く着替えた。
着替えを手伝わせようかと思ったが、それで俺が男だとばれたらやばいからな。一人で着る
学院の制服じゃなく、動きやすい平民の服。
一応、貴族の学院の制服だからそれなりに値も張るし、数にも限度があるからな。
それに比べて平民の服なら、汚れても破れても気軽に買い換えれる。
それにこれなら俺が剣の鍛錬のためだと言って、男物の服が着れるからな。
「おはよう、デルフ。」
「おう!おはよう、相棒!」
最後に俺はデルフリンガーを背中に背負う。
準備が終わった俺は使い魔・・・サイトって言ったか?・・・を叩き起こす。
「ぐぇっ!な・・・なんだ、なんだ!?」
「起きなさい。昨夜言ったみたいに、私があんたより強いことを証明してあげるわ。」
・・・朝から女言葉って疲れるんだよな~
のろのろと起き上がった使い魔は、第一に俺の顔を見て「夢じゃない!?」と叫びやがった。
俺のほうが夢だったらと思いてーよ!!
「そう思いたいのはこっちよ!ほら、鍛錬に行くから準備なさい!!自分の得物を持ってね!」
私はそう言って、部屋を出て行く。
そのすぐ後に長い棒を持った使い魔が追いかけてくる。
ふーん・・・あいつ、棒術をするのか。
俺はそれに感心しながらも外に出る。
さて、精々しごいてやるか。
場所は変って学院の中庭。
俺は軽く準備体操をする。
サイトも俺に習って身体を動かす。
「なぁ、メイジってのは身体も鍛えるもんなのか?」
サイトがそう聞いてきて、俺は止まらずに答える。
「個人によるわね。といっても、大抵のメイジは身体なんて鍛えずに、魔法を特化させる人たちがほとんどよ。」
軍人とかは別だけどな。
俺の答えに、サイトはふーんとなんだか解らずに納得している。
「さて・・・準備体操は終わり!次は基礎訓練するから、ちゃんとついて来なさいよ!」
「わかったよ。」
「それじゃ片手前倒立して、そのまま腕立て!」
俺は宣言したとおりにすると、サイトがえええ!!?と喚いている。
おいおい・・・男ならこのぐらい出来るようになれよ・・・
俺が呆れた目をサイトに向けると、なんとか片手前倒立は出来てる。
でも、バランスが悪くてすぐにドテッと倒れた。
それでもサイトは何度も前倒立の形に持っていくが、すぐに倒れる。
俺は5回目で、サイトを止めた。
「もういい・・・あんたは腕立て伏せでもやってて・・・片手でも両手でもいいから、200回ね。」
そう言って、俺も腕立てを始める。
とりあえず、あいつが終わる前に俺も終わらせないとな。
今日は500回ずつでいいか。
(サイト視点)
見た目は人形のように愛らしい。
戦闘なんて出来そうにない。
ふわふわとお花畑で遊んでいるのが似合う。
私のご主人様は、そんな第一印象がありました。
けど、その実態は私なんかよりはるかにタフで運動能力がある魔法使いでした!
私がルイズに言われたとおりに、腕立て伏せをやる。
片手じゃ無理だから、両手でやる。
元の世界である程度身体を鍛えてあったけど、ルイズを見てたら自分がいかにルイズより下なのかが解るわ。
なにせ・・・ルイズは片手前倒立したまま屈伸運動やってるもの。
私が腕立てを100まで切ったところ、ルイズは既に350を数えてる。
すごいペースだわ。
「あら、まだ終わってなかったの?」
ルイズは終わったみたいで、私の傍らに立つ。
明らかに片手400回を超える屈伸運動をやっていたのに、ルイズは息切れの一つも起していない。
「あと・・・50で、終わ、る。」
私は意気も絶え絶えに、そう言う。
「情けないわね。それじゃ、私は素振りをやっているからあんたも終わったら、得物の型の練習してなさい。」
ルイズはそう言って、剣を取り出すと素振りを始める。
その動きは剣術をやっていない私でも解るほど、洗練された動き。
昨夜ルイズが言ったとおりだ。
今の私はルイズより弱い。
私はなんとか腕立て伏せを終わらせると、棍を手にした。
3つのパーツに分かれた組み立て式の棍。
私はそれを手早く組み立てると、頭で型を思い出す前に身体が動く。
幼い頃から両親に騙されてやっているけど、別に身体を動かすのは嫌いじゃない。
今じゃ自然に身体が動くほど、自分に染み込んでる。
仮想の敵を叩く、薙ぐ、受け止める、いなす・・・そんな一連の動きをしながらも、私の目はルイズを捉える。
元の世界に帰る目処が立たない以上、ルイズの使い魔でいなくちゃならないし、養ってもらう恩返しはしようと思っていたけど、ルイズは強い。
実際に戦ったわけじゃないけど、私じゃ勝てない。
それが・・・なんだか悔しい。
私たちが素振りや型の練習を終えると、ルイズは一つ交えてみない?って言われて私は頷いた。
ルイズの実力・・・この目で見てみたい。
私は無意識のうちにそう思った。
結果は惨敗。
私はルイズにコテンパンにやられた。
「ほらね。私はあんたより華奢だけど、あんたより強いわよ!」
疲れで動けずにその場で横になる私に、ルイズはふふんと鼻を鳴らして胸を張る。
「ああ、俺の完敗だ。昨夜の言葉は訂正する。」
私は素直に負けを認めた。
負けたのに、なんだか清々しく感じる。
「まぁ、あんたも結構筋はいいわね。これからも私が鍛えてあげましょうか?」
「え・・・遠慮する。これじゃルイズが言ってた雑用が出来なくなる・・・」
今の時点で、私の筋肉は悲鳴を上げてるもの。
うう・・・ルイズはいつもこんな鍛錬してるの?
「それは困るわね・・・それじゃそこで待ってなさい。今、保健室で痛み止めの薬でも貰ってくるわ。」
ルイズはそう言って踵を返す。
「・・・あいつ、結構優しいのかな?」
私はその背を見送りながら、ぽつりと呟いた。
(ルーク視点)
鍛錬が終わって、俺は保健室から無断で痛み止めを拝借する。
まだ保険の先生もいないし、いつものことだからな。
それにしても・・・昨夜戦えないかと思ったが、なかなかやるな。
実践向きの俺の剣術より、お稽古事の棒術だったが鍛えれば悪くないな。
俺は無意識にほくそ笑んでる自分に気づいた。
なんか解らないが、あいつを鍛えるのがなんか楽しい。
「もしかしたら・・・いいダチになるかもしれないな。」
俺はそう呟く。
「なんでい相棒。使い魔を友達にしたいのかい?」
「同性のダチなんて、今までいなかったんだ。憧れてもいいだろう?」
「でもよ相棒。あいつでいいのか?」
「なにが言いたいんだ?デルフ。」
俺は背中のデルフリンガーを睨みつける。
「おおこわ・・・へいへい、もう何も言いませんよ。」
そこでデルフリンガーは黙った。
今まで、本当のことを打ち明けることのできる友達なんていなかった。
でも、あいつなら・・・サイトなら俺の友達になってくれるかもしれない。
ま、まぁ、人のファーストキス喪失の一端を担っているから、しばらくは苛めるけどな。
中庭に出て、俺はいつの間にか登っている朝日の眩しさに目を細めた。
それと同時にサイトに目を奪われた。
朝日の中、あいつのまわりには小鳥達が集まっている。
サイトはその小鳥達を手や肩に止まらせて、優しく微笑んでる。
優しく・・・綺麗に・・・
ドクンッ
その瞬間、俺の鼓動が一瞬跳ね上がったような気がした。
な、なに考えてんだ俺は!あいつは男じゃないか!!
しっかりしろ、俺!
俺は頭を振って先ほどのことを飛ばす。
それで俺はサイトのところに歩み寄った。
俺の気配に気づいた小鳥達は一斉に飛び立つ。
「随分懐かれていたわね。あんた、動物好きなの?」
「ああ、休んでいたら寄ってきたんだ。俺、動物は大概好きだぜ?」
そう言って笑うサイトは、さっきのとは違う笑顔で笑う。
男らしいとも、やんちゃっぽいとも言えない笑顔。
なんて言えばいいのか解らないその笑顔に、俺はまた頭を振る。
「ほら、痛み止めの薬よ。それ飲んだら、部屋に帰って授業の支度よ。」
俺はそう言って、寮に帰る。
その後に、サイトも着いてくる。
なんだか胸がもやもやするけど、なんなんだよ一体。
(サイト視点)
私はルイズから薬を貰って、部屋に帰る。
薬のおかげで痛みは大分引いたから助かったわ。
部屋に帰って、ルイズの授業の準備をするけど、着替えるとき部屋から追い出された。
同性同士だから、別に見ても平気だと思うんだけどな・・・って、私ルイズに性別話してなかったわ。
大抵の人間は、私の性別を誤解するから話しておかないと、ルイズは私のこと男だと思ったままだわ。
私は廊下でルイズにどう切り出そうかと考えていたら、隣の部屋から誰か出てきた。
「あら?あなた、そこはミス・ヴァリエールの部屋じゃなかったかしら?」
炎みたいな赤い髪の、褐色な肌の女性。
多分、年頃は私と同じ・・・にしては、反則な胸してるわね。
私だって女だから、そういうことは結構気にする。
「はい、そうです。」
とりあえず、この人の質問に答える。
そこに丁度いいタイミングでルイズが出てきた。
相変わらず、背中には剣を背負っている。
「お待たせ・・・ってキュルケ?」
ルイズは赤髪の人・・・キュルケって名前なんだ・・・を見た途端、怪訝な顔してその目線が胸に行く。
うんうん、解るわ。
あの胸は反則よね。
「おはようルイズ。その子があなたの使い魔?あははは!本当に人間を使い魔にしちゃったのね!さすが『ゼロ』のルイズ!あははははははは」
そう言って、キュルケはしきりに笑う。
それに耐えるようにルイズは歯を食いしばっている。
「真っ二つにされたいの?ツェルプストー・・・」
ルイズがそう言った途端(しかも手は剣の柄にかかっている)、キュルケの笑いが止まった。
それはもうピタッと擬音が付きそうなくらいなほどに。
「それは勘弁願いたいわね。でもね、ミス・ヴァリエール。使い魔っていうのはこう子のことを言うのよ?フレイム。」
キュルケが呼ぶと、また隣の部屋から赤いトカゲのような大きな生物が出てきた。
「うわっすげー!」
私は目をキラキラさせて、その生物の傍に行く。
その傍らで、ルイズとキュルケが何か話しているけど、この子可愛いvv
「俺、サイトっていうんだ。よろしくな。」
私は上機嫌に話しかけると返事があった。
耳に届くというより、頭に響く感じだ。
『よろしくサイト。我はフレイムという。サラマンダーの一族だ。』
・・・なんで、私。この生物の言葉がわかるんですか?
それにそれに・・・なんか右手のルーン?が光ってるんですけど!!!?
「ほら、さっさと朝食に行くわよ!」
「ぐぇっ!」
私が固まっていると、ルイズに襟首を引っ張られた。
ルイズに腕力で適わない私は、そのまま食堂まで引っ張られました。
その後、ルイズが引き起こした使い魔虐待(食事のこと)と教室爆破事件で、動物の声が聞こえるという謎が、私の頭からすっぽり抜けてしまいました。
キャラ紹介
ルイズ
本名:ルーク・フランデルト・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール
性別:男 年齢:16歳
外見その他は原作のルイズとそっくり。だが男。
それが本人にとってもコンプレックスとなっている。
貴族とか平民とか本人にとってどうでもいい。
魔法の才能がないと解り(?)、剣術を学んでいる。
当面の目標・少しでも男らしくなりたい!
剣術レベルは、その辺の傭兵は簡単になぎ倒せる。
ワルドレベルのメイジが相手でも引けはとらない。
愛剣はデルフリンガー
サイト
本名:平賀才人
性別:女 年齢:17歳
外見その他は原作のサイトそっくり。でも女。
女らしくない自分の身体にコンプレックスを持っている。
でも、胸は原作ルイズよりは弱冠大きい。
両親の趣味で男として育てられたが、本人はけっこう女らしい。
少しでも女らしくなりたいと思い、花嫁修業は欠かさない。
家事全般が得意で、料理は貴族の舌を唸らせるほど。
元の世界では棒術を習っている。
ギーシュレベルのメイジ相手なら互角に渡り合える。
当面の目標は元の世界に帰りたい!&もう少し女らしくなりたい!