「は?」
ルークはサイトに突然そう聞かれて、呆けたような顔をした。
「だから、なにが食べたいのかって聞いてるんだよ。」
サイトはどこから持ってきたのかエプロンをつけながら言った。
「あー・・・まずはなんでそんなことを聞くのか話してくれないか?」
「えー?だって、貴族のご飯って朝からあんなに豪華だし、栄養が偏りそうで心配なんだ。だから俺・・・じゃなかった、私がルークのご飯を作るって言ってるんだ。」
ルークはそう言われて、サイトが自分のために食事を用意してくれることに、なんだか心がジーンとした。
憎からず想っている少女が、自分のために食事を作ってくれる。
男としてこれほど嬉しいことはあまりないだろう。
ルークは内心ガッツポーズを取りながら、「サイトの作ってくれるものならなんでもいいよ。」と♪マークがつきそうな感じで返事をした。
サイトはそんなルークに気づくことなく、食事を作るお許しを貰ったと喜んで厨房に向かう。
ルークはサイトが一体なにを作るのか、期待を膨らませながら読書をする。
「これって・・・どういうことなんだ?」
ルークは引きつる頬を懸命に抑えながら、目の前で広がる光景を見る。
ワインを飲みながらサイトの料理を(勝手に)舌鼓を打つキュルケ。
はしばみ草の料理を黙々と食べ続けるタバサ。
給仕をしているサイトを何気に口説こうとしているギーシュとそれをガードしているシエスタ。
ここはルークの部屋で、予定ではサイトと二人っきりで食事を楽しむはずだった。
それなのに、ルークにとってお邪魔虫がいる。それも大量に。
「サイト?」
「あ、ルーク。みんなもご飯まだだって言うから、呼んだけどダメだったか?」
困ったように小首を傾げられては、ルークは強いことは言えない。
幻覚だと思うが、なぜか犬の耳と尻尾が見えて、それが垂れているようにも見えてしまう。
ルークはそれにクラリとなりながらも、了承した。
その日から、不機嫌な主人とみんなと食事が出来て上機嫌な使い魔が目撃されることになったな。